――お二方が提唱している開発プロセス改革の1つに「製品・技術資産の改革」があり、そこでは昨今多くの企業で導入が進んでいるモジュラーデザイン(MD)に言及されているのが印象的でした。今、3Dデータ活用によるプロセス改革を進めるとしたら、やはりMDは外せない取り組みなのでしょうか。
新井本氏:そうですね、確かに最近は増えています。さらに、誤解を恐れずにいいますと、MDを導入したものの挫折している企業が多いという状況があります。
――そんなに多いのですか。
新井本氏:MDをきちんと実施する場合、初めに中長期の製品ロードマップを作成し、その中から共通部分を見いだして、というように進めていきます。しかし、実際は多くの企業がロードマップを描く段階で挫折してしまいます。MD以前にも標準化ということが10年ぐらい前からいわれていましたが、効果が出るまでに時間がかかることもあり、苦戦している企業が少なくありません。
だからといって、MDが間違っているわけではないのです。MDの理論自体は正しいと、私は思っています。従って、MD導入のハードルを下げるためのアプローチが必要だろうということで、当社(デロイト トーマツ コンサルティング)では「SSM(Smart Structure Management)」という手法を提案しています*。
SSMの特徴は、QCDの改善やデザインレビュー(DR)での検証項目の絞り込みなどちょっとした成果を出しつつ、MDの考え方に慣れ親しめる点にあります。よくある話ですが、いきなりMDの導入が決まり、部品共通化を進めなさいといわれても、それまでそんなことを考えたこともない設計者からすれば、どう進めればよいのか分からないわけです。なので、SSMのようなアプローチによって日常的な業務の中でQCDの成果を出しながらMDへの感度を高めていき、機が熟したタイミングでMDを本格的に推進すればハードルがかなり下がるのではないかと考えています。