「バイク業界のテスラモーターズを目指す」――。二輪車のベンチャー企業テラモーターズ代表取締役社長の徳重徹氏は2013年7月11日、「iPhone」と連携させることが可能な世界初の量産型電動バイク「A4000i」の発表会で、事業戦略についてこう述べた(図1、図2)。

テラモーターズの電動バイク「A4000i」
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A4000iにiPhoneを連携させた様子。
この画面はバッテリー残量を表示したところ
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 テスラモーターズは 、富裕層向け電気自動車(EV)を開発し、世界中で販売する米国のベンチャー企業である。

 電動バイクを開発するテラモーターズはフィリピンにおける電動三輪タクシーの実証プロジェクトへの参加を2013年春に発表するなど、テスラに負けないくらいグローバルな展開が目立つ。ホンダやヤマハといった大手二輪メーカーが電動バイクの市場投入にまだ慎重な姿勢を示すなか、テラモーターズはスマートフォン(スマホ)連携機能を持つ電動バイクを国内はもとよりアジアでいち早く市場投入する。

 二輪車だけでなく自動車業界では、新興国市場の攻略と電動化は大きな課題である。ベンチャー企業ながらこの難題に挑む同社には、どのような勝算があるのだろうか。

アジア版「三種の神器」

 テラモーターズがアジア向け事業で強気な姿勢を示す背景には、特に東南アジア地域でバイクとスマホが若い世代を中心として「必携アイテム」となっていることがある。

 現在、1カ月の半分はアジアに滞在するという徳重氏は、「東南アジアではバイクとスマホが日本で言う『三種の神器』みたいなものになっている」と言う。確かに、台湾ではバイクの普及率が2人に1台、マレーシアとベトナムでは3人に1台、タイとインドネシアでは4人に1台という状況である。スマホに関しても、アジア地域では2009年から2011年にかけての市場成長率が4倍以上と急激な伸びを示す。

 テラモーターズが現在をアジア市場の好機だと捉える理由がもう一つある。従来、この地域で圧倒的な存在感を示していた中国製の電動バイクが「消費者にそっぽを向かれ売れなくなっている」(徳重氏)のだ。

 記者発表会で示された同社による調査結果では、中国製の電動バイクは2008年の12万台強をピークに、それ以降は年にわずか1万台程度しか販売されていないという。日本ブランドと高品質を掲げて電動バイクを市場投入すれば、十分に受け入れられるというのが同社の読みである。