トヨタ自動車でハイブリッド車(HEV)初代「プリウス」のハイブリッドシステム開発リーダーを務め、その後2003年の2代目プリウスに搭載した「THSII」などハイブリッドシステム全般の開発を手がけた八重樫武久氏(現コーディア代表取締役)が、ハイブリッド車および次世代環境車を展望する連載「ハイブリッド進化論」。第2回は、各社から登場しているプラグインハイブリッド車の普及を妨げる要因について見ていく。

 プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売が当初の期待のようには伸びていない。日本では、トヨタ自動車「プリウスPHV」の売れ行きが芳しくない上、電気自動車(EV)走行距離の長さを売りとする三菱自動車「アウトランダーPHEV」も電池の不具合で生産停止が長引いた。ホンダから「アコードハイブリッド」と同時にそのPHEVバージョン発売の発表があったが、法人や官公庁のリース販売のみとしており、販売の拡大は期待薄である。米国では米GM社の「Chevrolet Volt」、プリウスPHV、米Ford Motor社の「Fusion Energi」「C-Max Energi」、アコードPHEVの5車種が販売されているが、2013年1~7月のノーマルハイブリッド車(HEV)販売台数の30.3万台、EVの2.7万台に対しPHEVは2.2万台とEV以下である。

 筆者は、エンジン屋としてのこだわりではなく、今の技術の延長線上にEVや燃料電池車(FCV)の実用化はないと考えている。もちろん、ブレークスルー技術探究への注力は必要だが、手をこまねいてそれを待っている訳にはいかない。いつになるか解らないブレークスルー技術の出現までに、エンジン車の高効率化とCO2低減が必要と考え、ハイブリッドおよびその応用であるPHEV開発に取り組んできた。

 ご存じの方も多いと思うが、プラグとは電気機器をコンセントに接続するコネクタを指し、そのプラグをコンセントに接続して走行用電池の充電を行うクルマを“プラグイン車”と呼んでいる。この呼び方がポピュラーになったのは、それほど古い話でない。2003年9月にプリウスを2代目に全面改良したが、米国西海岸のユーザーが自分のプリウスの電池をエネルギ容量の大きなLiイオン2次電池に乗せ換え、外部電力でこの電池を充電する改造車を作りあげた。

 この改造車を市販のプリウスと区別するためにプラグインと呼んだことから一般的に使われるようになった。アメリカでは雨後の竹の子のようにプリウスをPHEVに改造するベンチャー企業が現れ、この改造PHEVが2001年9月11日の米同時多発テロ事件以後に強まった中東石油依存脱却を主張するネオコン派と、地球温暖化の対策を求める環境NGO(非政府組織)の宣伝ツールとし使われたのが、今のPHEVブームの先駆けである。

 充電式ハイブリッド自体は新しい考えではない。1990年代の初めには、EVの航続距離が短いことをカバーするために、エンジンで発電機を回して電池を充電するレンジエクステンダ付きHEVの開発が大手各社で進められた。しかし、カリフォルニア州で制定されたZEV(Zero Emission Vehicle)規制対応車として認めないという決定が下され、開発が打ち切られた。