図1 設置費用を削減(図:California Public Utilities Commission)
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図2 Oak Knoll Villas(写真:Everyday Energy社)
図2 Oak Knoll Villas(写真:Everyday Energy社)
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図3 Oak Knoll Villasの駐車場に設置したモジュール(写真:Everyday Energy社)
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図4 Solterra(写真:Home Energy Systems社)
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 米国カリフォルニア州で、賃貸集合住宅に太陽光発電システムを設置する事例が増えている。この動きを後押ししているのは、カリフォルニア州の補助制度と、前回紹介した「バーチャル・ネットメータリング(VNM:virtual net metering)」である(Tech-On!関連記事)。VNMは、遠隔地にある太陽光発電システムや、自らの所有ではない太陽光発電システムを、あたかも自分の家の屋根に設置しているかのように利用できる仕組みである。

 賃貸集合住宅のうち、まず低所得者向けで、太陽光発電システムの設置が活発になった。低所得者向け賃貸集合住宅に太陽光発電システムの設置を促す補助金プログラム「multifamily affordable solar housing (MASH)」が、カリフォルニア州で2007年に始まったからだ。

 MASHは、太陽光発電システムの設置容量に応じて、設置時に補助金を支給する。例えば、発電した電力を共用設備で使う場合は1.9米ドル/W(交流換算)、入居者が使う場合は2.8米ドル/W(交流換算)を、低所得者向け賃貸集合住宅の所有者や投資家に助成する。2007~2016年の予算規模は、合計で1億800万米ドルになる。

 このプログラムでは、太陽光発電システムをユーザーが仮想的に所有するVNMの利用を可能とし、導入コストを引き下げている。VNMを使わない場合、賃貸集合住宅の入居者ごとに、太陽光発電システムを実際に用意する必要があった。そうなると、太陽電池モジュールやパワー・コンディショナを入居者ごとに用意して、それぞれ配線しなければならない。

 これに対して、仮想的な所有を可能とするVNMを使うと、賃貸集合住宅の屋根にまとめて太陽電池モジュールを設置し、発電した電力を1台のパワー・コンディショナで変換した後、電力メーターを介して各入居者に分配すればよくなる(図1)。2013年7月時点で、6265世帯がVNMを利用して、毎月の電気代を削減できている。

 カリフォルニア州サンディエゴに本社を置く米Everyday Energy社は、カルフォルニア州の低所得者向け賃貸集合住宅において、VNM方式を積極的に活用している。同社 CEOのScott Sarem氏は、「VNMによって、建物の屋根や駐車場を最大限に活用した大容量の太陽光発電システムを、低コストで設置できるようになった」と語る。

 例えば同社が設計と設置を手掛けた「Park Villas」プロジェクトは、全144戸の低所得者向け賃貸集合住宅である。設置した太陽光発電システムの容量は464kWで、年間総発電量は77万7500kWhになる。この発電量の95%は入居者に、残りの5%は共用部分へ供給される。

 Everyday Energy社は2013年8月に、新たな賃貸集合住宅「Oak Knoll Villas」をサンディエゴに建設した(図2)。集合住宅と駐車場の屋根に設置した太陽電池モジュールの容量は、合計で139kW。全52戸の電力消費量の約80%を供給でき、入居者の電気代の削減に貢献している(図3)。Sarem氏は「電気代の削減分で、子供に新しい靴を買ってあげた」と、ある入居者に感謝されたという。