図1 軟磁性材料
磁性材料の測定器を販売している岩通計測が用意したサンプル
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 エアコン、太陽光発電システム、電気自動車など、多くの機器の電力制御をしているのがパワー・エレクトロニクス素子。その小型・高効率化を担っているのは、パワー半導体である。現在、広く使われているSi(シリコン)半導体(FETやダイオード)に加え、SiC(シリコン・カーバイト)やGaN(ガリウム・ナイトライド)による半導体がある。実は、それと同じくらい重要なのが磁性材料だ。二つの国家プロジェクトで研究開発が進行している軟磁性材料に絞って紹介する。

 軟磁性(soft magnetic material)材料は、コイルの鉄心(コア)や磁気遮蔽物(シールド)に使われることが多い。変圧器(トランス)やアナログ・フィルタ、モーターに欠かせない磁性材料といえる。主な原料は、ケイ素鋼やパーマロイなど鉄合金である(図1)。

 硬磁性(hard magnetic material)材料ではいったん加えた磁界で磁化が残るのに対し、軟磁性材料では磁界を取り除くと磁化がほとんど残らない。レアアース問題で話題の多いネオジム磁石などの永久磁石は、硬磁性材料を原料としている。一方、電磁石の鉄心がコイルに電流を流したときに磁力を帯び、流すのをやめると磁力がなくなるのは、鉄心が軟磁性材料のためだ。