米Apple社の製品はマルチメディア・プレーヤー(iPod)からノート・パソコン(Mac)、スマートフォン(iPhone)、タブレット端末(iPad)へと広がり、世界中の消費者を携帯情報端末の世界に引き込んだ一方、iTunesを通してアプリケーションをダウンロードするという新たな消費スタイルをも生み出した。

 Apple社は2012年暮れにテレビ端末 (iTV)を発売する予定だったが、“コンテンツの現地化”と人と機械が直接コミュニケーションを取れる機能(HMI)を付けたりすることに手間取り、発売時期が大幅にずれ込んでいる。最近では、2013年第3四半期にも本格的にテレビ市場へと参入すると噂されている。これまでのようなセットトップ・ボックス(STB)とは違い、今回はまさしく“テレビ(TV Set)”として成熟したテレビ市場に攻勢をかけるというものだ。恐らく向こう2年以内に、テレビ産業全体に大きなインパクトを与えることになるに違いない。

1. “次世代Apple TV”の容貌

 図1を見ても分かるように、2012年第3四半期から第4四半期にかけて、液晶テレビの価格と位置付けは激しい競争にさらされている。この市場は大きく「主要価格帯ゾーン」、「ミドルレンジ~ハイエンド・ゾーン」、「新興ハイエンド・ゾーン」の三つに分けられる。

 このうち「主要価格帯ゾーン」には、主流サイズとなる32~42型のミドルレンジ~ローエンド機種が集中しており、目下、テレビ市場の超激戦区である。「ミドルレンジ~ハイエンドゾーン」は40~60型のミドルレンジ~ハイエンド機種が中心だ。バックライトにはLEDが採用されており、解析度はフルHD (1080p)、フレーム・レートは最高で240Hzに達する。

 三つめの「新興ハイエンドゾーン」の位置付けと価格帯だが、2012年下半期に登場した大型テレビがこのゾーンになる。画面サイズは55~60型で、ハイエンド機種~ミドルレンジ機種の3次元(3D)表示機能やインターネット機能が付いたものになる。価格帯は1200~1500米ドルである。このゾーンにはまだまだ攻め込む余地があり、Apple社が得意とするハイエンド市場でもある。スマートTVなどハイエンド機能を導入するのに打ってつけだ。従って、Apple社がテレビ製品へ参入するなら、このゾーンに狙いを定めてくる可能性が高いだろう。

図1 世界における液晶テレビの各サイズ製品の位置付けと価格分布(2012年第3~第4四半期)
横軸の単位は米ドル。出典:工研院IEK(2013年8月)
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