使いやすさを考え小型液体ステージを追加

 イプシロンロケット試験機において、小型液体ステージを追加しているのは、衛星を液体燃料ロケット並みの精度で軌道投入できるようにするためだ。固体燃料ロケットの場合、実は一度火を点けると途中で切ることができない。このため、ロケットと衛星の双方の性能を熟知し、重点的に制御すべき要素を見極められなければ、衛星を希望通りの軌道に投入することが難しい。

 ただ、それではロケットに詳しくないユーザーにロケットを使ってもらうことが困難になる。そこで、試作機では、必要に応じてエンジンを切ったり入れたりして推力を制御できる液体燃料エンジン〔小型液体ステージ(PBS:Post Boost Stage)〕を追加しているというわけだ。

 なお、イプシロンロケット試験機の打ち上げ予定日時は、2013年8月27日の13時45分~14時30分。発射場は、内之浦宇宙空間観測所のM台地。今回のミッションは大別して2つだ。1つは、惑星分光観測衛星「SPRINT-A」*2を搭載し、地球を回る人工衛星軌道に乗せること(図4)。もう1つは、イプシロンロケットの飛行実証とイプシロンロケットの打ち上げシステムの妥当性の検証だ。

*2 惑星分光観測衛星「SPRINT-A」 地球を回る人工衛星軌道から金星や火星、木星などを遠隔観測する、世界初の惑星観測用の宇宙望遠鏡。

惑星分光観測衛星「SPRINT-A」のイメージ
図4●惑星分光観測衛星「SPRINT-A」のイメージ
提供:JAXA