機体の知能化で発射台での作業期間を短縮

 イプシロンロケットの最大の特徴は、手軽かつ高頻度な打ち上げを可能とするために、「低コスト化によるコストパフォーマンスの向上」「発射場での作業(組み立て・点検・打ち上げ・後処理)に要する期間の短縮(以下、期間短縮)」「信頼性の向上」などに向けたさまざまな新しい取り組みを展開していることだ。例えば、代表的なものとしては、次のような取り組みがある。

①ロケット(機体)に人工知能を持たせ自動・自律的に機体点検を行うシステムの実現
②部品の一体化

 このうち①は、ロケットでは世界初の取り組みであり、機体に人工知能を持たせ自動・自律的に機体点検を行えるようにすることで、低コスト化と期間短縮を図ろうというものだ。

 通常、ロケットの打ち上げでは、発射台の上にロケットを組み上げた後で、電気系の点検を実施する。M-Ⅴロケットをはじめとする従来のロケットでは、この作業に多くの時間を要していた。そのため、第1段ロケットを発射台に立ててから打ち上げ翌日の後処置作業までに要する期間が、例えばM-Ⅴロケットの場合で42日間と長きを要していた。

 イプシロンロケットでは、自動・自律的点検システムである即応型運用支援装置「ROSE」を機体に搭載する(図2)。これにより、ROSEと発射管制設備を連携させて点検作業を実施することが可能になっている。その結果、点検時間を短縮し、従来必要だった点検用のケーブルの取り付けや取り外しなどの作業を省略・軽減でき、発射場での組み立て・打ち上げ・後処理に要する期間の短縮が可能になる上、期間短縮による低コスト化も享受できる。

イプシロンロケットに搭載される即応型運用支援装置(人工知能)「ROSE」
図2●イプシロンロケットに搭載される即応型運用支援装置(人工知能)「ROSE」
提供:JAXA