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エアコンは「恐怖の対象」のままでいいか

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2013/08/26 05:00
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大阪市における1930年〜2013年の8月の最高気温
大阪市における1930年〜2013年の8月の最高気温
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大阪市における1930年〜2013年の8月の最低気温
大阪市における1930年〜2013年の8月の最低気温
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 暑い日が続いています。40℃超えの地域も複数出てくるなど、今年の夏は例年にもまして暑いようです。私事で恐縮ですが、お盆に帰省した際、この暑さに関係したことで、実家の両親と大喧嘩してしまいました。

 それは、エアコンを実家に入れるかどうかについて。実は、私の実家にはエアコンが1台もありません。いくら親が平気だといっても、高齢者の熱中症死が東京都内だけで100人を超えたという報道がある中、全く他人事ではなく、心配で毎日気が気でないのです。親の心配だけではなく、帰省した際の自分達もあまりの暑さに夜寝るのが大変で、こんなところには長居できないというのが実感です。

 これまで実家でエアコンなしでもなんとかなったのは、実家が都市郊外にあって、気温が気象庁発表の県庁所在地の値より2~3℃低いことが多いからです。しかし、それもそろそろ限界。都市部の気温が37~38℃だと、実家の気温も35℃を超えてしまいます。

 こういう状況のため、意を決してエアコンの導入を提案したところ、両親、特に父は当初断固拒否という態度でした。「夏は暑いのが当たり前でこれまで何十年もエアコンなしでやってきた。逆に、エアコンの冷房は体が芯まで冷える。たとえ、エアコンを送ってきても送り返す」とけんもほろろのありさまです。熱中症で亡くなっている方の多くは、エアコンを持っていないか、持っていても使っていなかったと報道されています。私の両親と同じように、高齢者の方にはエアコンへの恐怖感が強い方が多いのではないでしょうか。

 私はこの恐怖感を取り除くには、日本の夏やエアコンについての二つの誤解を解く必要があると感じました。一つは、「夏は今も昔も同じように暑い」という誤解。もう二つは、「エアコンの冷房は辛いもの」という誤解です。

統計データは「錯覚説」を支持?

 ただし、最初の誤解を解くのは少々やっかいで、時間が掛かりました。私の感覚では、確かに夏は年々暑くなっているのですが、70~80歳台の人が同じ感じ方をしているとは限りません。実際、両親には、「36~37℃の暑い日は昔からあった。暑くなっているというのはむしろ錯覚だ。あるいはマスコミのミスリードだ」と反論されてしまいました。これにはデータを示して納得してもらうしかありません。

 ところが、過去の夏の気温をちょっと調べるだけでは、むしろ父の「錯覚説」が正しいようなデータが出てきます。例えば、環境庁による「平成22年度 熱中症とヒートアイランド現象の関係解析調査業務」という報告書には、日本の主な都市の1950~2000年の8月の最高気温(ただし、前後10年、当該年も加えて計21年の移動平均値)の推移のグラフがあります。そのグラフでは、1950年代から最近まで明確な右肩上がりではなく、1970~1980年代はむしろ気温が下がり、1990年ごろ以降はわずかに上がってきた様子が示されています。1950年と2000年の気温の上昇分はあるとしても、1℃あるかないかです。

 同じ報告書にある、8月の平均気温の年推移というグラフはほぼ右肩上がりですが、それでも1950年と2000年の気温差は大きな都市でも1℃前後です。この結果は、地球温暖化、あるいはヒートアイランド現象による気温上昇がゆるやかとはいえ確かに起こっているという証拠になるかもしれません。しかし、これらは21年の移動平均値で、実際には年ごとのバラつきが4~5℃はあります。数十年にわたる1℃の差を人間が「正しく実感」していると考えるのは無理があります。つまり、この統計データを見る限り、「夏が年々暑くなってきた」は、限りなく錯覚、思い込みに近い、と結論したくなります。

最大の違いは、「夏の長さ」と「夜の暑さ」

 「エアコン不要説」を唱える父に論破されそうになった私ですが、「夏は暑くなっている」という実感が単なる錯覚とはどうしても思えません。そこで、気象庁が公開している過去の気象データを基に、大阪市における1930年から10年ごとの8月の毎日の最高、最低気温を色付きの表にしてみました。猛暑と言われた1942年、そして今年の分も8月21日まで入れてあります。大阪市を選んだのは、関東地方と違って、オホーツク海高気圧による冷たい北東の風、いわゆる「やませ」の影響を受けにくいことで、トレンドの変化を見やすいと考えたためです。

 この表から分かるのは、やはり数十年前に比べて最近の夏は圧倒的に暑くなっているという傾向です。これは8月の最高気温だけを見ても分かりません。1930~1940年ごろでも37℃台の日はあるにはあったからです。ところが、数十年前はそうした日があったとしてもほんの2~3日。一方、最近はそうした日がずっと長く続くのです。最高気温の違いはわずかでも、夏の長さは大幅に長くなっている、といえるでしょう。

 こういうと、大阪市で最高気温が35℃以上の「猛暑日」の連続記録は1942年の16日間だ、という反論が出てきそうです。この記録は、まさに今年の8月21日に塗り替えられましたが、「昔の夏も暑かった」という証拠にされてしまいそうです。

 しかし、具体的な気温を比べると、1942年と今年では暑さの水準が全く違います。この1942年7~8月の16日間の猛暑日のうち、11日間分は7月の気温ですが、その最高気温の大半は35℃台です。一方、今年の夏は36℃台は当たり前で、38℃の日さえ頻発しています。しかも、1942年8月は最初の5日間を除くと、気温はほぼ平年並みに戻っています。

 数十年前と最近の違いでもう一つ気が付くのは、最低気温の上昇ぶりです。1942年7月の猛暑日が続いた日でさえも、最低気温は25~26℃でした。最低気温が27~28℃の日が珍しくない最近の夏とは大きな違いです。今年の8月11日は東京での最低気温が30.4℃、いわゆる「超熱帯夜」になってしまいました。夜の寝苦しさは数十年前と比較になりません。

 結局、平均気温とか、月ごとの最高気温、あるいは35℃以上の猛暑日といったおおざっぱな物差しでは夏の暑さを捉えきれなくなっているわけです。

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