ただ、EMS(電子機器受託生産)/ODM(Original Design Manufacturer)業界では、Pegatron社の生産能力に不安を覚えたApple社が、当初は予定していなかった台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕にも廉価版iPhoneの生産発注を決めたとの見方が広まっている。

 先の工商時報が伝えた消息筋も、2013年第4四半期から廉価版iPhoneの生産にフォックスコンが加わると指摘。さらに、同期の出荷台数は2社合わせて3000万~3200万台に上る見込みだとしている。

 本コラムでは前回、フォックスコンが同社が独占受注したiPhone 5Sと廉価版iPhoneの生産要員として20万人を新規採用し、河南省鄭州の工場と広東省深センの工場を合わせて46万人体制を準備していると伝えた。これにPegatron社の9万人を加えると、両社合わせて55万人。ちなみにこれは、東京・杉並区(約54万人)や兵庫県姫路市(約53万人)の人口とほぼ同じだ。

 フォックスコンは2011年、生産の自動化を促進するため、2012~2014年までの3年間で計100万台のロボットを導入するという計画を打ち出した。ところが最近になって、中国の経済紙『第一財経日報』(2013年8月16日付)が、実際の導入は直近で10万台程度にとどまるなど、進捗はかなり遅れていると報じた。報道の真偽を問われたフォックスコンの郭台銘董事長も同月20日、「今年の10月に、ロボットの生産で技術が難関を突破する。これを機に、自動化計画は軌道に乗る」とコメント。計画通りのペースでは進んでいないことを暗に認めている。

 iPhoneの生産に日本の都市丸ごと1つ分のマンパワーが必要という状況は、まだまだ続くことになりそうだ。