こうした中、廉価版iPhoneの生産を請け負う台湾Pegatron社(和碩)で、生産要員が大幅に不足しており、生産に支障をきたしかねないとのうわさが、iPhone供給業者の集積する台湾や中国の市場や業界で浮上している。

 このうわさを報じたのは、台湾の経済紙『工商時報』(2013年8月21日付)。同紙が消息筋の話として伝えた内容はこうだ。

 米Apple社は、2013年第3四半期出荷分の全量をPegatron社に発注した。ところが生産を行うPegatron社の中国上海工場では、1四半期に1000万台規模の生産をまかなえるだけの人員を揃えることができていない。焦りを覚えた同社では人材紹介会社などを通じて大規模な採用を展開。同時に、ワーカーなど自社の従業員に対し、友だちや親戚を紹介するよう奨励し、実際に入社した場合には、1人につき600元(1元=約16円)のボーナスを支給するとして、人集めに奔走している--というもの。

 中国のポータルサイト「百姓網」の求人ページには現在も、「Apple社のiPhone生産工場がワーカー募集」と題したPegatron社の上海工場の求人が掲載されている。内容は、「工場の従業員を5万人から8万人まで増員するための急募。経験不問。給料を払いながら丁寧に指導するから安心」などと書かれている。

 人手不足のうわさについて、Pegatron社の林秋炭スポークスマンは2013年8月20日、同年5月の投資家向け説明会で公表した計画通り、今年に入って約4万人を増員済みで、上海工場の人員は直近で約9万人いると強調。その上で、人材は常に流出するため、これを補うために採用活動を行うのは極めて正常なことだとして、大幅な人手不足にあるとの観測を打ち消した。