最近、電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の売れ行きが悪いとの報道を数多く見受けるようになりました。ですが、この分野を取材してきた私にとっては想定以上に売れているという印象を持っています。というのも、EVは1充電当たりの走行距離や充電時間などの制約から一部のユーザーにはメリットがある商品、PHEVについては価格の高さや集合住宅での充電の問題などがあり、普及には時間がかかるとの認識があったからです。

 それでも世間的に“売れ行きが悪い”となるのは、日産自動車‐Renaultグループが2011年に掲げた「2016年度までに累計150万台のEVを普及させる」という計画が衝撃的だったからではないでしょうか。確かに現状では、この目標の到達はなかなか難しいと思います。ただ、日産自動車 会長のCarlos Ghosn氏はEVがニッチな市場であると以前から明言していました。それでも新車販売の数%をEVにできれば、年間100万台を超える市場になると踏んで、果敢に市場形成に動き、先行者利益を得ようとしていたわけです。

 実際のところ、日産‐Renaultグループの累計販売台数は2013年7月時点で10万台を超えました。このうち、日産自動車のEV「リーフ」が7万1000台を占めています。リーフは2010年12月に販売を開始していますから、2年半で7万台を超えたことになります。これは年間当たり約3万台ですから、なかなかのものです。続いて、Renault社が2011年後半に発売したEV「Kangoo Z.E.」が約3万台、2012年初頭に発売した小型EV「TWIZY」が約1万1000台となります。

 この他、EVでは米Tesla Motors社が好調です。同社が2012年6月に納車を開始したスポーツ・タイプのEV「Model S」は2013年6月末時点で累計販売台数が1万2700台を達成しました。ここ最近の売れ行きも好調で2013年第2四半期は目標販売台数の4500台を上回る5150台を販売しました。つまり、年間2万台ペースとなります。

 現在、累計販売台数が300万台を超えて“普及車”となったトヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」ですが、1997年に発売した初代プリウスは、約5年半で12万3000台(年間約2万台)しか販売台数がありませんでした。それが2代目(2003年9月~2011年12月)で119万2000台に拡大しました。

 3代目は2009年5月の発売から約4年で168万8000台を販売しています。それと比べても、EVの初期販売台数はそれほど見劣りするものではないでしょう。EVは1充電当たりの走行距離や充電時間などの障壁がありますが、今後も市場規模が徐々に拡大していくのではないでしょうか。

 同じく、あまり売れていないとの印象を受けるPHEVですが、2012年1月に発売したトヨタ自動車の「プリウス PHV」は2013年4月末時点での累計販売台数は3万3000台です。2010年12月から販売を開始した米General Motors社の「Volt」は2013年6月末時点での累計販売台数は約4万1000台となっています。2013年1月に発売したものの、同年6月にリコールを届け出て、8月19日にようやく生産を再開した三菱自動車の「アウトランダー PHEV」は、受注残が1万8400台もあるということです。いずれにしても初代のPHEVとしては順調に売れているのではないでしょうか。

 日経エレクトロニクスと日経Automotive Technologyでは、こうしたEVやPHEV、小型EVなど本誌で取材してきた電動車両の記事をはじめ、主要車両の詳細を一覧できる別冊「電動車両のすべて 2014」を2013年9月に発刊する予定です。ご興味のある方はぜひご一読ください。