マーケティングとはプロモーションだけではない
先日、マーケティングの世界では有名なフィリップ・コトラー氏が次のように言っています。
「(60年代に)マーケティングに必要な四つのP(プロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=流通、プロモーション=販売促進)を提唱しましたが、日本ではまだ理解が進んでいない気がします。マーケティングそのもののステータス(地位)が低いですね」
「どうもマーケティングをプロモーションとだけ捉え、テレビで30秒の広告を打てばいいと考えているだけのビジネス・パーソンが多くいます。マーケティング担当者が果たして製品開発にまで入り込んでいるのでしょうか。価格や流通の販路(チャネル)の決定についても関与の度合いが弱いです」
「マーケティングは日本を救うか 経営に深く関わる人材を」(2013年7月28日付 日本経済新聞朝刊)
コトラー氏は、マーケティングを経営全般で考えず、プロモーションとだけ捉えていると指摘しています。コトラー氏の提唱する4Pでは、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションといった経営全体を見る必要性を説いているのだと思います。しかし残念ながら日本企業では、技術もマーケティングもバラバラに自分の狭い領域だけでものを考えているという姿がこの記事からも浮かび上がってきます。
海外の企業では、組織にクロス・ファンクション機能を取り入れる、あるいは、開発部門からマーケティング部門までグローバルで横断的にプロジェクト・チームを作り、エンジニアも販売にまで関わって売上高に責任を持つということを行っているのを耳にします。実際私もそういう企業と関わりを持ち、その有用性を実感したことがあります。
これからの日本企業には、ビジネス全体をデザインする機能を取り入れる必要性がますます大きくなっていると感じています。そしてそのグランド・デザインができる人材もこれからは求められていくと思います。もう「よいものは売れる」で済ませられる状況ではなくなっていることを理解し、現実的に対処していかなければならなくなっているのではないでしょうか。
生島ブログ「日々雑感」も連載中。
中国ビジネス書の翻訳出版本である「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃」の監修・解説も担当した。