米国発のデジタル・カメラの新カテゴリが、世界で旋風を巻き起こしている。このカテゴリの登場は、カメラを「お家芸」としてきた日本メーカーに大きな衝撃を与えた。日本メーカーが後塵を拝してきたソフトウエアやWebサービスの分野ではなくハードウエア製品、しかもパソコンやスマートフォンのような汎用性の高い機器とは異なり、カメラ専用機器だったからである。

 その新カテゴリは「アクション・カメラ」と呼ばれている。主にサーフィンや自転車、スキー、スノーボードといったアウトドア・スポーツで映像や写真を撮影することを想定して開発された小型軽量のカメラである。(『日経エレクトロニクス Digital』の詳細特集「GoProショック」)

 特徴は極めてシンプルだ。基本的な機能は、170度程度の広角レンズで動画や写真を撮影できること。多くの機種は、デジタル・カメラでは当たり前の液晶モニターですら標準では備えていない。この特徴がアウトドア・スポーツの愛好家を足掛かりに、一般のユーザーの琴線にも触れた。これまで見たことのない動画や写真を手軽に撮影できる機器として、ソーシャル・メディア時代のキーパーツになりつつある。

 この1~2年ほどスマートフォンに押されて、大きく出荷台数を減らしているコンパクト型カメラやビデオ・カメラを尻目に、アクション・カメラは売れ続けている。米調査会社のIDCによれば、2012年に世界でのビデオ・カメラに占める出荷台数の比率は約2割に達した。2013年には比率がさらに高まり、約4割に到達すると同社は予測している。

GoProを追いかけて日本メーカーも相次いでアクション・カメラ分野に参入した。写真は、左から順にJVCケンウッドの「GC-XA2」、パナソニックの「HX-A100」、ソニーの「HDR-AS15」。
[画像のクリックで拡大表示]

500億円超を売り上げたヒット商品

 アクション・カメラの代名詞になっている製品は、米国のベンチャー企業であるWoodman Labs社の「GoPro」シリーズである。米国の報道によれば、このブランドは2012年12月に、米国の家電量販最大手である「Best Buy」のビデオ・カメラ部門でトップ・ブランドの「ソニー」を抜いた。同部門でのトップ交代は初めてのことだという。台湾の調査会社であるTMR台北科技によれば、同年のGoProの販売台数は200万台規模で、Woodman Labs社の推定売上高は5億6250万米ドル(1米ドル=97円換算で約551億円)という。(『日経エレクトロニクス Digital』の詳細記事「なぜ、ヒットしたのか、開発と普及の足跡をたどる」)

 「なぜ、あれほどまでに売れているのか…」。苦心して開発した“便利な”機能満載の製品ではなく、そのほとんどを省いた“不便”であるはずの製品に消費者が飛び付いた。この事実に首をひねりながら、日本メーカーは後追いでアクション・カメラ分野に参入している。

 カメラを扱う台湾のEMS/ODM(機器の設計・生産受託)大手も、この分野に本腰を入れ始めている。TMR台北科技によれば、「ほんの1年ほど前までEMS/ODM企業にとってアクション・カメラは本業の傍らで請け負う余技という位置付けでしかなかった」。それが大きく変わった。コンパクト型カメラ分野の急激な市場縮小と、アクション・カメラの急成長が本気にさせたのだ。

 このうねりを生み出しているアクション・カメラとはどんな製品か。