製品開発に限らず、製造設備の開発においてもソフトの比重は増加している。ここでも、実際の機械の代わりにCADの3Dモデルを“動かす”ことによる、制御ソフトの開発支援は有効だ。今回は、製造設備の開発期間を短縮するため、実機レスでのデバッグに取り組む東芝の事例について解説する。

東芝、製品開発サイクルに合わせた、製造設備の開発期間の短縮

 卓越した生産技術力で、グローバルな競争に打ち勝つトップレベルの複合電機メーカーを目指すのが東芝である。同社の生産技術センターは、制御ソフトの実機レス・デバッグ・システムの中でVmechを利用することで、製造設備の迅速な立ち上げに取り組んでいる。新たな生産技術手法の開発に挑戦し、その結果を早期に実用化していこうという取り組みである。

 製品を計画通りに市場投入するためには、製品の開発スケジュールに適合するように設備を開発し、量産開始時期を守ることが絶対条件である。つまり、製品開発サイクルと同様に、製造設備の開発期間の短縮も必須になる。製造設備の開発工程には、機構や電装などの実機開発と、制御ソフトの実機検証という作業がある。同社は、Vmechを活用することで、実機デバッグ工程期間の短縮と効率向上に成功している。

 高度な製品を生産するための同社の設備は複雑である。製造台数や製造上必要な機能と性能、使用環境によりさまざまな形態の製造設備を開発し、制御しなくてはならない。同社は設備の制御システムに、産業用PCとPLCを使い分けている。PCベースであれば、他のPCベースのシステムとの互換性も高く、ソフトの開発にC++ のような汎用言語を使用することができる(図1)。一方、PLCは産業用に特化しており、開発環境や制御ユニットを統一できるので、堅牢なシステムを構築することが可能だ(図2

図1●PCを用いた制御システム
図1●PCを用いた制御システム
[画像のクリックで拡大表示]
図2●PLCを用いた制御システム
図2●PLCを用いた制御システム
[画像のクリックで拡大表示]
* この取り組みに関しては、東芝グループの技術雑誌「東芝レビュー」Vol. 64、N0. 5(2009)に詳しい。ここでは、その内容に一部情報を追加して紹介する。