このような特徴を有しながらも、CAD・PDM・PLM統合システムが将来も継続して活用されていく保証はないと筆者は考えている。というのも、前述の構造変化に伴ってプライムOEMの役割が変わり、必要とするデータも変わってきているように見受けられるためである。現代のOEMの役割は、共同開発パートナーがインテグレートしてきたサブシステム同士を組み合わせ、航空機全体としての統合検証(機能検証、組立検証など)を実施することにある。極端にいうと構造系・機構系において用いるデータではトポロジ情報の継承こそが必要であり、ジオメトリ精度が高くデータ量の軽いビューワー機能とBOM情報、それら製品定義データを管理する機能で事足りる時代が来る可能性があるからである。

 むしろ、サブシステム・インテグレーターと、パートナーになるコンポーネント・サプライヤーこそ、統一したCAD・PDM・PLMツールが必要なるのではないだろうか。将来的にはサブシステム・インテグレーターが、実質的に“開発案件ごとに最適と思われる統合システムとそのベンダーを選択する”という時期が来るかもしれない。

 今のところ、プライムOEMがCAD・PDM・PLM統合システムの選択を主導しているが、継続的に同一ベンダーの統合システムを使い続ける必要はない。近年も米Boeing社が、開発に使用する統合システムを従来とは異なるものにすると言明した。

 さらに現在、PLMのシステム選択に影響を与える変化の兆しが見え始めている。ITサービス・プロバイダーと呼ぶべき企業の世界的な規模での成長である。一例を挙げると、1980年代に主にソフト系のオフショア開発支援から始まった企業が、今や航空機の開発から製造・組立、運行支援に至るまで、システム構築、BPO(Business Process Outsourcing)などで成長を続けている。これらの企業は、PLMに関わらず全体最適なシステム構築、運用の支援でユーザー企業に深く入り込んでいるので、PLMのシステム選択に影響を与える可能性も高い。もちろん、全体最適が優先されて最も重要な航空機の品質を決める開発フェーズのツールが少しでも犠牲になることがあってはいけないことも、今後の重要な選択肢として意識すべきであろうが。