「ようやくスタートした、という印象です」――。

 セイコーエプソンでセンサ事業を担当する加納俊彦氏(同社 センシングシステム事業部 SS企画設計部 部長)は取材の冒頭、こう語りました。これは、日経エレクトロニクスの2013年8月5日号で掲載した解説「インフラ監視、期待と現実」を執筆するためにお話を伺った際の発言です。加納氏が「ようやくスタートした」と表現したのは、センサを用いて橋梁やトンネルなどの構造物をモニタリングする“インフラ監視”に関する取り組みです。

 実は、インフラ監視をテーマにした記事は、2013年4月15日号で掲載した特集「朽ちないインフラ 」として大々的に取り上げたばかり。今回の8月5日号では、より具体的な取り組みの紹介を通し、インフラ監視を実現するために克服すべき課題や取り組みをまとめています。

 セイコーエプソンは、1Hz以下のゆっくりとした構造物の振動を捉えられる高精度な加速度センサを開発しました。「スマートフォンに搭載されている安価なMEMS品で十分ではとの声は少し前までありましたが、多くの場合それでは精度が足りません。求められる性能のターゲットがはっきりしてきました」(加納氏)というのが現在の状況です。ユーザーである土木・建築業界と、技術を提供するエレクトロニクス業界の間で、少しずつですが会話が始まっていました。

民生機器への適用からセンサとの組み合わせにシフト

 センサによるインフラ監視において、普及のカギを握る一つが電源の確保です。特に期待されているのが、我々の身の回りの未利用エネルギーを収穫して電力として活用する「エネルギー・ハーベスティング」。