今さらながら、LED照明は、すっかり一般的な存在になりました。

 『日経エレクトロニクス』が、「『電球』になる発光ダイオード」と題した特集記事を掲載したのは、1996年10月21日号のこと。今から、ざっと17年前です。ちょうど記者になり立てのころ。赤いLEDしか見たことがなかったので、先輩記者の記事を読んで「へぇー」と感心したのを思い出します。

 1995年に日亜化学工業が、フルカラー表示に対応した高輝度の緑色LEDを発売。それに先立つこと3年前に同社が発表した1cdの青色LEDと合わせ、青色、緑色のLEDが1ケタ以上、明るくなったタイミングでした。同じ頃に同社は青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDも開発しています。「電球になる」は、光の3原色と白色が登場したことを受けての特集でした。

目立たない日本メーカー

 それから月日は経過し、照明の世界は様変わり。LED照明は身近になりました。市場が成熟してくると、電子機器の世界はどうなるのか。Tech-On!のテーマサイト「家電・PC」で、7月8日~8月5日の約1カ月間、最もアクセス数が多かった記事は、これまで繰り返されてきたパラダイム・シフトの到来を予感させます。照明関連のコンサルタントを務めるグラナージュ代表の石田のり子氏による「次世代照明『有機EL』、中国で花開くか」です。

 6月に中国・広州市と台湾で、それぞれ開催された展示会の様子から、一大消費地に成長する可能性がある中国を中心とした現在の照明分野の動向を追った記事です。2013年に入って中国メーカーが次世代照明と目される有機EL照明に本格参入したことが注目を集めています。

 ただ、これまで家庭向けの照明機器を扱ってきた大手の日本メーカーは展示会に対する関心が薄く、あまり目立つ動きはなかったよう。LED照明についても中国側は「どうやったら日本のように家庭で普及させられるのか」と、日本の状況に関心を抱いていましたが、日本を代表する照明機器メーカーであるパナソニックと東芝は照明機器関連を出展しませんでした。

 日中関係の悪化、業績不振など、社会的、政治的、ビジネス的な背景はさまざまありそうです。とはいえ、展示会自体は総じてLEDや有機ELという次世代照明ヘの期待感で盛り上がっていた。つい2年前に中国市場の攻略をぶち上げていた両社の出展がなかったことを、石田氏は「不思議に映った」と記しています。