コミュニティ・ソーラーの仕組み
コミュニティ・ソーラーの仕組み
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 米国では、約75%の居住者が太陽光発電システムを導入できない状況にあると推定されている。その理由は、屋根が狭い、屋根の形状や方角、屋根材が太陽光発電に向いていない、他の建物の陰になっている、自分の所有する建物ではない、など様々だ。こうした人々は、太陽光発電システムを設置すれば実現するはずの、電力の自給自足や売電収入の確保といった恩恵を受けることができない。

 そこで米国では、誰もが太陽光発電システムの恩恵を受けられる「コミュニティ・ソーラー(Community Solar)」という仕組みが人気を博している。「シェアード・ソーラー(Shared Solar)」や「コミュニティ・ソーラー・ガーデンズ(Community Solar Gardens)」、「コミュニティ・シェア・ソーラー(Community Shared Solar)」とも呼ばれる。

 コミュニティ・ソーラーは、同じ地域内の別の場所にある太陽光発電システムの発電量を、あたかも自分の家の屋根に設置したシステムで発電したかのように、自分の電気料金に組み込むことができる仕組みである。米国には現在51のコミュニティ・ソーラー・プロジェクトが稼働しており、合計の年間発電量は約40MWに達する。誰でも太陽光発電に参加できるようにして、太陽発電システムの設置工事などで地域の経済活動を活発にするとともに、環境保護にも貢献するのがポイントである。

 カリフォルニア州のサクラメント電力公社(SMUD)の例で、コミュニティ・ソーラーの仕組みを説明しよう。なおSMUDは、米国の自治体が運営する電力事業者の中で最大規模を誇る。太陽光発電システムの導入に積極的で、2012年には電力会社別の年間太陽光発電システム設置量ランキングのトップ10に入っている。

 まずSMUDは、2008年に1MWのコミュニティ・ソーラーをカリフォルニア州に設置した。次に、SMUDと電力供給契約を結んでいる契約者に、毎月定額料金でこのシステムの発電量の提供を始めた。契約者は、定額料金に応じたシステムを、仮想的に所有できる。

 毎月の定額料金は、0.5kW当たり10.75米ドル/月や、4kW当たり132米ドル/月などが設定されている。契約者の年間消費電力量を超えない範囲で購入できる。契約期間は20年である。例えば2kW分の発電量を購入した契約者は、2kWのシステムの発電量に相当する発電量を、自らの消費量から差し引き、残った額を電力会社に支払う。