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HOMEスキルアップマネジメント竹内 健の「エンジニアが知っておきたいMOT(技術経営)」 > 少子化やワークライフバランスだけではない、女性が働き続ける必要性

竹内 健の「エンジニアが知っておきたいMOT(技術経営)」

少子化やワークライフバランスだけではない、女性が働き続ける必要性

先を見通せない時代では、共働きこそがリスクを下げる

  • 竹内 健=中央大学教授
  • 2013/08/05 10:06
  • 1/1ページ

 少子化により労働人口が減少する日本では最近、「女性活用」が政府の重要な政策課題になっています。また、家庭や地域活動などのプライベート面と仕事を男女で分担し、バランスのとれた人生を送るワークライフバランスの観点からも、女性が働くことが奨励されています。

 その一方、「三歳児神話」とも言われるように、子供が小さい時には、母親が手元で育てるべきであると、女性が働き続けることに根強く反対する人もいます。でも、女性が働く際のもう一方の当事者、職場で大多数を占める、男性の考えが今一つ見えてこない。女性が働くには、当然、男性が家事や育児を今まで以上に分担する必要があります。

 ひょっとしたら、家事や育児は面倒だから、子供が生まれたら奥さんは仕事をやめて、専業主婦になってもらった方が良いと考えている男性がまだ多いのかもしれません。でも、男性にとっても、それで本当に良いのでしょうか。

 言い方を変えましょう。今の時代に、「奥さんが専業主婦で子供がいて、この先、20年、30年、自分一人だけで稼ぎ続けて家族を養える」と自信を持って言える男性がどれだけ居るのでしょうか。

 私は全くそんな自信はありません。技術の移り変わりは非常に速く、自分では時代に合わせて専門分野を変えているつもりだけど、いつまで時代の流れについていけるか、わからない。

 自分の専門分野が日本では不要となる時が来るかもしれませんし、そもそも、大学もいつまで現状のように存在し続けられるかわからない。少子化の上、Massive open online course (MOOC)といったネットを使った無料、低コストの教育が普及することで、大教室での講義は意義を問われています。大学の半数が不要になるとも言われています。

 他の産業でも似たような状況です。ソーシャルメディアの普及により、新聞社などの既存のメディアが苦境に立たされ、デジタルカメラやスマートフォンの普及で新聞社でもカメラマンがリストラされているケースがあります。技術の進化により、いつ、どの仕事が消滅するか、予測することは不可能なのです。

 また、世界的な競争の激化により、日本で消滅する仕事もあります。システムLSI大手のルネサスエレクトロニクスは経営危機に陥り、工場の閉鎖やリストラを繰り返しています。10年前は、携帯電話の心臓部であるCPUを開発してきた技術者たちが、スマートフォンへの移行に乗り遅れたために、事業撤退、リストラに遭っているのです。

 技術者たちの多くは、かつて日立、三菱電機、NECといった大手電機メーカーに入社し、当時の会社の主力だった半導体事業に配属された優秀な方たちです。歴史のある大企業の主力事業に配属されたわけですから、おそらく、定年まで会社で働き続けられると思っていたでしょう。

 こうした、大企業の出世コースに居た方たちが、技術や市場の変化により、別会社に切り出され、リストラにあわれている。かつて、企業に大きな儲けを出した功労者があっさり切られているのを見るにつけ、個人も稼げる時に大きく稼がないとおかしい、と痛感します。

 もはや、多くの産業では、終身雇用も事実上なくなっているし、「若いうちは安い賃金で我慢し、年を取ってから高い賃金をもらう」といった年功序列も破綻しています。

 しかし、嘆いたところで、誰も時代の変化は予測できない。スマートフォンやGoogleの検索、Amazonがこれほど普及することは、誰も予想できなかった。激しい変化を予想できないのですから、私たちにできることは、あらかじめ、リスクを分散することではないでしょうか。

 家族の単位でサバイブするためには、男性が一人で働き続けるのは、リスクが高すぎます。共働きで一人の働き手が失職しても何とか食べていけるように、準備をしておく。できれば、ハイテクとローテク、輸入産業と輸出産業のように、夫婦で違う産業の方が望ましい。まあ、打算だけでは結婚はしないので、産業を分けるのは難しいでしょうが。

 更に、個人としても会社に依存しすぎずに、引き出しをたくさん持っていた方が良い。今の仕事がダメになった時に、収入は下がっても、多少はお金が稼げるスキルを普段から準備しておく。

 実際に私も共働きなのですが、子育てや家事を分担すると思わぬ利点もあります。仕事一辺倒の生活ではなく、保育園や学童保育などで様々な方と接することで、自分自身の人間的にも幅が広がり、それが、仕事にもプラスになる。私の場合は、保育園や子供の学校の先生が、子供一人一人を良く見られて、同じ教員として、わが身を反省することがばかりです。

 また、自分の子供を育てることと、職場で部下を育成することは共通点も多いでしょう。職場で他人を育てているのに、自分の子供の育成に係らないのは、もったいないことです。

 過去、知り合いのエンジニアで、「家族を養うためにリスクを取れない」と、大企業からベンチャー企業や外資系企業への転職を諦めた方をたくさん見てきました。そうした人が、「リスクが少ない」と思って居続けた大企業が傾き、いまリストラにあっている。

 今さら振り返っても仕方ないですが、安定して見えないベンチャー企業や外資系企業の方が、実はリスクが少なかったのかもしれません。転職後の会社も傾いていたかもしれませんが、「家族を養うため」という理由で、チャレンジできなかったとしたら、同じ失敗をするにしても、後悔が大きいでしょう。

 最近感じる違和感は、女性が働き続けることが、あたかも「女性のため」のような言い方がされること。同じ場所にとどまることがリスクになった今、共働きをしながら、仕事、家事、育児を男女で分担することこそが、男性にとっても最もリスクが少ない生き方ではないでしょうか。

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