実際の機械の代わりにCADの3Dモデルを“動かす”ことにより、制御ソフトの開発を支援するアプローチに取り組む企業が増えている。前回紹介したアキュセラ(放射線治療機器)の事例に引き続き、今回はPLCを組み込んだ製造装置の開発に3Dモデルを活用するウシオ電機の取り組みを解説する

ウシオ電機、実機レスのソフトウエア検証を目指す

 露光装置の実機レスのソフト検証を目標にVmechを導入したのがウシオ電機である。1964年に産業用光源メーカーとしてスタートした同社は、新光源や光学技術の開発を核に、“光のソリューション”を提供する「光創造企業」へと発展している。これらの光技術は照明の領域にとどまらず、エネルギーとして利用・応用される新しい領域を開拓しつつある。

 同社の中核製品の一つである露光装置も高い光学技術に裏打ちされたものである。半導体や液晶パネルの基板の作成に利用される露光装置は、受注対応の都度設計品がほとんどで、試作を繰り返すことができない。ここで課題となるのが、製品を駆動するための制御ソフトの開発である。

 これまでは、ハードの設計と組み立てがある程度進んだ段階でソフトを開発してきたが、その検証にはどうしても実機が必要であった。これでは、検証作業の開始時期が遅れる上、ハードの開発が遅れたら、ソフト開発にしわ寄せが来てしまう。ここにシミュレータとしてのVmechの出番がある。

 露光装置は、回路のパターンをシリコンウエハや基板に焼き付ける装置である。その構造は非常に複雑だ。システムを構成する主要な機器だけでも、基板(ワーク)やマスクを搬送するロボット、基板の出し入れに利用するエアシリンダ、精密な位置決めに利用するアクチュエータなどがある。これらの機器は全てPLCで制御される。図1に露光装置の制御システム全体を図示する。画像処理をするアライメント・ユニットPLCと、メカ制御をするシステムPLCはワークステーションによってコントロールされている。

図1●シミュレーション対象の露光装置の制御システム構成
図1●シミュレーション対象の露光装置の制御システム構成
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 より高品質な装置をタイムリーに提供するためには、ハードの設計や組み立てと並行して、制御ソフトを開発検証する仕組みが必須であろう。ハードの設計が終わった段階で、そのCADモデルをXVL化すれば、軽量3Dデータでシミュレーションできる。これを実現したのがVmechである。