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エディターズ・ノート

白物家電の「多機能化」競争の終焉

  • 中島 募=日経エレクトロニクス
  • 2013/08/05 05:00
  • 1/1ページ

 先日、ポップアップ型のトースターを購入しました。オーブン型のトースターはお餅や干物、グラタンなどいろんな食材を調理できますが、ポップアップ型トースターはトーストしか焼くことができません。それでも、ポップアップ型を選んだ理由は二つあります。

 一つは、オーブン型と機能が重複する調理家電を既に持っていることです。お餅や干物ならガスコンロのグリルで焼くことができるし、グラタンはオーブン・レンジで調理できます。「他の家電と機能が重複しているオーブン型トースターを買うのは、何となく無駄を感じる。どうせなら、単機能でもトーストが一番おいしく焼けそうなポップアップ型にしよう」と考えました。

 そして一つの理由が、デザインです。オーブン型トースターはオーブン・レンジと機能が重複していることに加え、形状も似ています。「キッチンはスペースが限られているので、似たような機能や形状の家電を置きたくない」という家族の強い要望がありました。私はその辺をあまり気にしないタイプなのですが、キッチンの景観を気にする人にとってはそういうものらしいです。

 消費者の価値観の多様化に伴い、白物家電の市場でも多様化が進んでいます。多様化の方向性の一つとして、ポップアップ型トースターのようなシンプルな家電が消費者に見直されています。ポップアップ型トースターは一時期、オーブン型の普及によって市場から完全に姿を消しました。しかし最近になって人気が復活し、国内の中小家電メーカーや海外メーカーの製品が家電量販店の売り場に並ぶようになりました。

 これ以外にも、食材を石臼ですりつぶすようにゆっくりとすり潰す「低速ジューサー」や、油を使わずに揚げ物ができる「ノンオイルフライヤー」といった家電がブームになっている例もあります。こうした単機能家電は、値段が安い製品ばかりではありません。低速ジューサーやノンオイルフライヤーの多くは2万円以上しますし、ポップアップ型トースターも1万円以上の高級機種があります。そして、これら高級機種の多くが韓国HUROM社やオランダRoyal Philips Electronics社、イタリアDe'Longhi社といった海外メーカーの製品です。

 日本の白物家電はこれまで「高級機種=多機能」という等式で進化を続けてきました。しかし近年は、この等式が必ずしも成り立たなくなっているように感じます。つまり機能は少なくても、「デザイン性と基本機能」が優れていれば、それを高付加価値として見なす消費者が増えている。例えば英Dyson社の掃除機は、国内の大手家電メーカーの製品に比べて機能はそれほど多くありません。プラズマイオンの発生機能も搭載していませんし、ゴミを検知するセンサも備えていません。それにもかかわらず、同社は4万円以上の高級機種の市場で4割のシェアを持っているそうです。

 もちろんDyson社の掃除機には、デザイン性やサイクロン式の元祖としてのブランド力があります。しかし、それらだけで売れ続けるほど、日本の消費者の目は甘くありません。掃除機としての基本機能がしっかりしているからこそ、今も人気を維持しているのだと思います。そしてこれはDyson社の掃除機に限った話ではなく、国内で売れている海外製品の多くに言えることだとみています。

 かつての国内の白物家電市場は、日本の大手家電メーカーが圧倒的な競争力を持っていました。しかし近年は、調理家電や掃除機といった中小型の家電を中心に、海外メーカーの存在感が増しています。なぜ、海外家電のヒットが相次いでいるのか。そして、そこにどんな消費者の意識の変化があるのか。また、海外メーカーは国内の市場拡大を狙ってどういったアイデアと技術を製品に盛り込んでいるのか。『日経エレクトロニクス』8月5日号の特集「『海外白物』旋風に学べ」で分析しました。ご興味を抱かれた方は、ぜひご一読いただければ幸いです。

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