エネルギー
 

太陽電池で世界一周できる時代に

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2013/07/31 05:00
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 最近、太陽電池を搭載した乗り物が急速に進化しつつあります。そして必要なエネルギーのかなりの割合、あるいはすべてを太陽光発電で提供することで、世界一周さえも可能になってきました。商用の乗り物にも太陽電池を積極的に搭載することで、燃料問題や蓄電池への負担を軽減できる可能性が見えてきたかもしれません。

 例えば、ソーラー・カーです。ソーラー・カーは以前からあり、実際の自動車でも既に一部の車種に太陽電池が載っています。ただし、一部の車種に載っているといっても、これは自動車の移動に使うのではなく車内の機器を使うためのものです。自動車の移動に使えるエネルギーを稼ぎ出すタイプについては、まだ開発段階にあります。これまでのソーラー・カーの大部分は一人乗りで、運転手はカヌーのような狭い空間に体を押し込めならねばならず、乗り心地も含めて実用性があるとはいえないものでした。

 2013年7月、ついに複数の人数が搭乗できるソーラー・カーが登場しました。オランダEindhoven University of Technologyの開発チームが、4人乗りのソーラー・カー「Stella」を開発したのです。同チームは、オーストラリアで毎年10月に開催されている大陸横断3000kmのソーラー・カー・レース「The Wolrd Solar Challenge 2013」(WSC2013)にこのStellaで参戦予定です。

 今回のWSC2013では、実用的なソーラー・カーの開発を促す狙いから新たに「クルーザー・クラス部門」が新設されました(関連記事)。同部門では、スピードだけでなく、ソーラー・カーに乗れる人数も審査対象になります。Stellaも同部門にエントリーする予定で、4人乗りながら、1度の蓄電池の充電と太陽光発電だけで750km走るとしています。Stellaの仕様の詳細はまだ明らかにされていませんが、「太陽電池の出力だけで必要なエネルギーのほぼ1/2近くを賄う」(Stellaの開発チーム)ということです。

 太陽光発電だけですべてを賄うことはまだ難しいですが、4人乗りの車で、外部調達するエネルギーが約1/2で済むのです。コースの大半が半砂漠地帯であるという、太陽光発電にとって非常に好条件であるとはいえ、非常に画期的なことであるのは確かでしょう。今後は、このレースの同部門に参加する他のチームの情報も楽しみです。

ソーラー・ボートは既に世界一周を達成

 太陽光発電で動く乗り物は自動車だけではありません。船も太陽電池で世界を巡り出しました。スイスPlanetSolar社が建造したソーラー・ボート「MS Turator Planetsolar」号は長さ約35m、幅約23m、重さ95tの船で4~6人が乗船可能。エネルギー源は定格出力93.5kWの太陽電池だけです。もちろん、Liイオン2次電池も搭載しています。

 同船は、2010年9月にモナコ港を出港し、米国マイアミ、メキシコ、パナマ、ガラパゴス諸島、トンガ、オーストラリアのブリスベーン、フィリピンのマニラ、香港、シンガポール、タイのプーケット島、インドのムンバイ、ペルシャ湾岸諸国などを巡った後、スエズ運河を渡って、2012年5月にモナコ港に帰港しました。寄港先の多くでイベントを開いているため、約19カ月も掛かりましたが、正味の航行時間はもっと短く済みそうです。

 MS Turator Planetsolar号は2013年になって、今度は大西洋一周の旅に出ており、2013年4~5月の26日間で大西洋を横断しました。現時点はカナダ北東部の海を航行しています。

全身太陽電池の旅客機はいつできるか

 さらには、大型飛行機も太陽光発電で世界を飛んでいます。2010年に欧州内を試験飛行していたスイスのソーラー・プレーン「Solar Impulse」は、今や欧州を飛び出し、地中海を横断した後、大西洋を渡り、2013年5~7月に米国をサンフランシスコからニューヨークまで横断しました。2015年4~7月には現在建造中の2号機「HB-SIB」で世界一周飛行を計画しています。

 Solar Impulseの1号機「HB-SIA」の太陽電池モジュールの出力は定格で45kW。HB-SIAは翼長こそ63.4mで、大型旅客機のそれに匹敵しますが、非常に細身の設計になっているため、大型旅客機であれば太陽電池を実装するスペースはHB-SIAの数倍はありそうです。仮に200kW分を実装可能だとすれば、推進動力にはならないまでも、照明や空調など機内で必要な電力の一部は賄えそうです。そうすることで、機内に搭載する蓄電池を少しでも小さくできれば、空の安全性もより高まりそうな気がします。

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