図1●3Dスキャナで取り込んだ歯型形状
図1●3Dスキャナで取り込んだ歯型形状
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図2●旧Sensable Technology社(現3D Systems社)の歯科設計用システム
図2●旧Sensable Technology社(現3D Systems社)の歯科設計用システム
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図3●独Envisiontec社製プリンタでの造形状況。さかさまにぶら下げた形で造形する
図3●独Envisiontec社製プリンタでの造形状況。さかさまにぶら下げた形で造形する
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図4●3Dプリンタで造形した技工物形状。これをもとにロストワックスの要領で金属製品にする
図4●3Dプリンタで造形した技工物形状。これをもとにロストワックスの要領で金属製品にする
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図5●独Envisiontec社製の3Dプリンタ
図5●独Envisiontec社製の3Dプリンタ
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図6●米3D Systems社製の3Dプリンタ
図6●米3D Systems社製の3Dプリンタ
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図7●受注した技工物について、歯型を入れる容器。カラなのは、データで形状情報を受けているため
図7●受注した技工物について、歯型を入れる容器。カラなのは、データで形状情報を受けているため
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 先日、歯科技工物を製作するデンタス(本社徳島市)の「徳島プリントセンター」を見学する機会がありました。「プリント」ですから、言わずと知れた3Dプリンタが活躍する場所です。デンタスは日本各地から集まってくる歯型のデータを基に、3Dプリンタを使って歯科技工物を製作しています。3Dプリンタ、スキャナ、技工物設計システムがフル稼働していました。

 技工物の注文時には、通常は歯型(石膏の模型)が形状情報の伝達手段になります。技工センターは歯型を基に、かぶせもの(クラウン)や詰め物(インレイ)などの補綴物を製作し、発注元に送り返します。もし形状情報がデータで伝達できれば、物理的な歯型を送るのに必要な時間を節約できることになります。

 模型をスキャナで読み込むところも見せてもらいました(まだ、患者さんの口の中を直接スキャンするのは難しいようですが)。スキャナに取り付けてある治具に歯の模型を取り付けてスキャンします(図1)。

 スキャンした歯型データを基に、技工物をコンピュータ上で設計します。歯科専用の“モデリングツール”で、ペン型の3次元入力装置を用いて材料を盛ったり削ったりしながら、形を決めていきます(図2)。

 形が決まったら、いくつものデータを合わせて、3Dプリンタで造形します(図3~6)。サポート材を最小で済ませるため、液体状の樹脂の表面を固めつつ上方に引き上げていく方式の装置です。さまざまな患者さんの補綴物を隙間なく並べるようにして、造形します。3Dプリンタは独Envisiontec社製のものと、米3D Systems社製のものを利用しています。

 造形した樹脂製モデルを基に、ロストワックスの要領で金属製の鋳物にして、研磨工程を経て技工物が完成します。まだ、技工物そのものが3Dプリンタでできるわけではありません。樹脂製モデルで納品する場合もあるようです。

 既に、同社には数十社の技工所から発注があるとか。受注案件ごとに歯型を入れるはずの容器には、歯型がないものが目立ちます(図7)。代わりに形状データを受け取っているからです。

 デンタスは、将来さまざまな歯科医院から歯型の形状データを集め、これを基に海外で技工物を設計し、日本国内の3Dプリンタで生産、歯科医院へ発送するというビジネスモデルを考えています。歯科技工士も、必ずしも良好でない作業環境で長時間作業するためか、若手が思うように育っていないそうです。しかし、技工物のニーズが減少するわけではありません。「労働集約型だった従来のビジネス形態から、装置産業へと急速に変わっていくのではないか」(デンタス)とみられます。