こんにちは。かなりあ社中の山本です。

 前回は、被災地の支援活動で活躍するソーシャル・リーマンズを紹介しました。ロート製薬の復興支援室長を務める河崎保徳氏です。(前回の記事「バリバリのやり手営業マンを変えたもの」)

 被災地で目の当たりにした状況は、バリバリのやり手営業マンだった河崎氏にとって、「とにかく売り上げを上げる」という目先の成果に捉われてきた自身のサラリーマン人生を見直す契機になりました。

ロート製薬 復興支援室長の河崎保徳氏
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 30年先、40年先の日本全体が抱える問題を、被災地は今抱えてくれている。実は、その支援や、現地での社会課題の解決という中長期的な視点での取り組みは、閉塞感が漂う日本メーカーの未来を開くキッカケになるのではないか。その発想の転換は、企業人だからこそできる新しい支援の形を生み出しています。

 河崎氏が仕掛人となってロート製薬とカルビー、カゴメの3社が設立した、震災遺児・孤児の高校卒業後の夢を支援する公益財団法人「みちのく未来基金」は、前回紹介した通りです。震災で親を失くした若者が大学や専門学校、留学を志す際に、その授業料を支援しています。震災時に0歳だった赤ちゃんが大学を卒業するまでの期間を想定し、支援を25年間継続することを約束した他に類を見ない取り組みです。この他、震災後に旧雄勝町(現石巻市)の漁師が立ち上げた企業「OH! GUTS!(オーガッツ)」の事業支援も手掛けています。

 その河崎氏は、なぜ被災地での活動を始めることなり、どんな思いで取り組んでいるのか。そして、なぜその活動が、企業にとって中長期的な視点での新しい発想を生み出すのか。今回は、この辺りの話を、「OH! GUTS!」の取り組みを中心に紹介していきたいと思います。

 長年、営業畑でキャリアを積んできた河崎氏は、震災当時、未経験だった物流関係の仕事に携わっていました。関西にいたので、最初は遠くで起きていること程度にしか捉えることができなかったそうです。しかし、地震発生から4~5日たったある日、同氏のサラリーマン人生を変える1通のメールが届きます。