PHEVに乗りたくても、使えない
確かに、充電用の電源の確保は、PHEVにも電気自動車にも共通の課題でしょう。日本の集合住宅に住む身からすると、駐車スペースは必ずしも近くないし、電源がある好条件はほとんどない。米国のようなガレージでもあれば別ですが、一戸建てで駐車スペースがあったとしても、電源があるとは限りません。
とはいえ、「あのトヨタ」なのだから、そんなことはよく分かっていて、織り込み済みでしょ。そうした見方も、何となく正しい気もします。
そもそも、記事の見出しにあるような見誤り(誤算)ではないだろうという推察です。当初見込みで発表した数字が大きかっただけで、新しいカテゴリの製品としては3万台以上売れれば、御の字だろうということでしょう。
新しいカテゴリの製品の提案が始まるとき、旧来の技術の延長線上にある製品と、新技術を載せた製品の間にはギャップが生まれます。そのとき、ギャップの間に商機がある。クルマでは今、エンジンと電動化がそれに相当することは間違いありません。
エコロジーをキーワードにした「環境に優しい」という方向性を訴求する時代感はあるものの、技術開発の本質は燃費をいかに高めるかというところにあります。
「やっぱり燃費がいいのが一番だよね。しかも、エコでやさしいらしいし」
「いやいやエコなのが最高だよ。しかも、燃費がいいのよね」
どちらがメインかは分かりません。いずれにせよ、維持費を安くする燃費の向上で、エンジンと電気の狭間にさまざまな着地点があり、製品企画も多種多様になっていく。勢いのある若い新しい技術はガンガンと性能を伸ばしていき、一方で旧来技術も長い間覇権を維持してきただけに老練な粘り腰でしぶとく若手を引き離しにかかる。この構図がある技術分野は、洋の東西を問わず盛り上がります。技術者にとっては、腕の見せどころでしょう。
エレクトロニクスの業界で言えば、例えば、液晶パネル。
プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)というライバルが登場すると多くの会社がよってたかって性能向上を加速して振り切り、もう技術の進化はそれほどないだろうと思われてきた最近でも有機ELパネルに対抗する動きの中で再び学会発表の件数が増えているといいます。「ハード・ディスク装置(HDD)」と「フラッシュメモリ」なども、同じ構図かもしれません。(関連記事「継続的な『酸化物半導体+有機EL』開発と、さらなる進化を遂げる『液晶』」)
クルマでも、「『電気』から『エンジン』ヘの回帰」という話題をこのコラムでも何度か取り上げました。