PHEVに乗りたくても、使えない

 「マンション住民はPHEVを利用したくても使えない。充電できないから。PHEVは環境意識が高いインテリ層や都市部の住人向けであるがマンション住人が多い。地方の人は走行距離も長く、充電の煩雑さ、途中で電池残量切れの不安などから利用に踏み切れないのではないか。PHEVは、都市部に住んで駐車スペースを確保できる戸建住宅に住んでいる人にしか現状では向かないと思う

 確かに、充電用の電源の確保は、PHEVにも電気自動車にも共通の課題でしょう。日本の集合住宅に住む身からすると、駐車スペースは必ずしも近くないし、電源がある好条件はほとんどない。米国のようなガレージでもあれば別ですが、一戸建てで駐車スペースがあったとしても、電源があるとは限りません。

 とはいえ、「あのトヨタ」なのだから、そんなことはよく分かっていて、織り込み済みでしょ。そうした見方も、何となく正しい気もします。

 「全EVの総販売台数は4年間で3万台くらいだったと思うが、PHVの単一車種が1年半で3万台以上売れたのなら大ヒットじゃないですか? そもそも充電インフラが整うまでEVが無謀な様に(EVに適した用途もあるが限定的だし)、PHVもその魅力が十分発揮できない。それを考えれば、EVより多く販売できて、ユーザーの(EV)使用状況を得られる点で、プリウスPHVの目的は十分達成できたと思うけど。トヨタにすれば、初代プリウスだって2年で2万台くらいだったし、誤算とは思ってないでしょう
タイトル
トヨタのプリウスPHV

 そもそも、記事の見出しにあるような見誤り(誤算)ではないだろうという推察です。当初見込みで発表した数字が大きかっただけで、新しいカテゴリの製品としては3万台以上売れれば、御の字だろうということでしょう。

 新しいカテゴリの製品の提案が始まるとき、旧来の技術の延長線上にある製品と、新技術を載せた製品の間にはギャップが生まれます。そのとき、ギャップの間に商機がある。クルマでは今、エンジンと電動化がそれに相当することは間違いありません。

 エコロジーをキーワードにした「環境に優しい」という方向性を訴求する時代感はあるものの、技術開発の本質は燃費をいかに高めるかというところにあります。

「やっぱり燃費がいいのが一番だよね。しかも、エコでやさしいらしいし」

「いやいやエコなのが最高だよ。しかも、燃費がいいのよね」

 どちらがメインかは分かりません。いずれにせよ、維持費を安くする燃費の向上で、エンジンと電気の狭間にさまざまな着地点があり、製品企画も多種多様になっていく。勢いのある若い新しい技術はガンガンと性能を伸ばしていき、一方で旧来技術も長い間覇権を維持してきただけに老練な粘り腰でしぶとく若手を引き離しにかかる。この構図がある技術分野は、洋の東西を問わず盛り上がります。技術者にとっては、腕の見せどころでしょう。

 エレクトロニクスの業界で言えば、例えば、液晶パネル。

 プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)というライバルが登場すると多くの会社がよってたかって性能向上を加速して振り切り、もう技術の進化はそれほどないだろうと思われてきた最近でも有機ELパネルに対抗する動きの中で再び学会発表の件数が増えているといいます。「ハード・ディスク装置(HDD)」と「フラッシュメモリ」なども、同じ構図かもしれません。(関連記事「継続的な『酸化物半導体+有機EL』開発と、さらなる進化を遂げる『液晶』」)

 クルマでも、「『電気』から『エンジン』ヘの回帰」という話題をこのコラムでも何度か取り上げました。