テーマサイト「産業機器・部材」における今回(期間:2013年6月20日~7月18日)のアクセスランキングでは、材料・加工技術に関するものが上位に入った。
鉄スクラップから造る“新しい鉄”
材料・加工技術に関する記事で上位にランクインしたものの1つが、2位の「“新しい鉄”によって、日本の基盤材料の鉄を強化します」である。この記事は、コラム「イノベーターひとづくり考」の中の1本。同コラムは、イノベーション創出の現場にいる実務者が何をしてきたか、何をしていくのかを紹介することで、創造性に富むイノベーターを育てるヒントを提供することを目的としたものだ。今回の記事では、日本のものづくりの基盤材料である鉄の強化に向け、鉄スクラップを貴重な鉄資源として活用する“新しい鉄”の研究開発に取り組んできた物質・材料研究機構ナノ材料科学環境拠点拠点マネージャーの長井寿氏にインタビューしている。
同記事によると、「日本では現在、社会インフラストクチャーの更新が本格化し始めた段階であり、まだ生産する鉄の方が(鉄スクラップの発生量より)多い。しかし、将来は現在の生産量である約1億t/年の中の内需分に相当する約7000万t/年の鉄が、スクラップとして排出されると予想できる」。 そこで、近未来に国内で発生する鉄スクラップを主な“鉄原料”として、“新しい鉄”を造り出す製鉄法を導入しようというのが長井氏の提案だ。具体的には、設備投資費が巨額になる現在日本国内で主流の高炉法ではなく、比較的設備コストが安く済む電炉法を適用して、小回りの利く製鉄法を加味することを提唱する。
高強度なのに成形しやすいハイテン
今回上位に入ったもう1つの材料・加工技術関連の記事は、4位の「ホットプレス材」だ。
ホットプレス材とは、端的に言えば、高張力鋼板(ハイテン)の一種だ。ハイテンとは、強度を高めた鋼板で、鋼板の強度を高めると鋼板を薄くできることから、自動車の車体の軽量化などに用いられている。ただ、常温でプレス成形することを前提とした通常のハイテンは、高強度化すればするほどプレス成形がしにくくなる。そのため、高強度化が徐々に進めにくくなっている。
ホットプレス材は、(1)加熱して軟化させた状態でプレス成形する、(2)成形品を金型内に保持したまま急冷することで強度を高める、といったことを前提にしたハイテンだ。加熱による素材の軟化効果で成形しやすくなる上、高温の素材をプレス成形直後に急冷することから焼き入れ効果で強度が上がる。要するに、高強度なのに成形しやすいハイテン--それがホットプレス材だ。
もっとも、ホットプレス材は日本国内向けの自動車ではこれまでほとんど使用されていなかった。通常のハイテンと比べて成形コストが高かったからだ。しかし、成形コストを下げる技術が確立されてきたことで、日本国内向けの自動車でも適用が増えてきている(詳細は、ホットプレス材)。