現在、日経Automotomotive Technologyの編集部は、7月末発行の「2013年9月号」の編集作業に追われています。私が担当する解説記事のテーマは「安くなる自動ブレーキ」。どうやら、向こう2~3年の間に、簡易な自動ブレーキ機能はエアバッグやABSと同様に、当たり前の装備になりそうです。

 理由の一つは、欧州の新車アセスメントプログラム(Euro NCAP)の評価項目に2014年から自動ブレーキが加わることです。自動ブレーキを装備していないと、EuroNCAPで5つ星評価を得るのが、不可能とはいえないまでも、かなり難しくなるのです。これを先取りするように、最近日本で発売した輸入車は、ほとんど例外なく、自動ブレーキ機能を標準装備するようになってきています。

 例えばフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)が2012年10月に発売した「up!」は、149万円からという、輸入車で最も低い価格であるにもかかわらず、レーザレーダで前方を監視し、30km/h以下で走っているときに先行車に追突が避けられないと判断すると、自動的にブレーキをかける「シティエマージェンシーブレーキ」を標準装備しています。このように輸入車では、クラスに関係なくこうした自動ブレーキを標準装備するようになっているのです。

 国内でも、標準装備ではないものの、ダイハツ工業は、レーザレーダを使った自動ブレーキ「スマートアシスト」を、2012年12月に部分改良した「ムーヴ」から搭載し始めました。同装備を搭載した車種の価格を、搭載していない車種の5万円高に抑え、装着率は発売から半年で約6割に上るといいます。これを追って、7月16日に部分改良したスズキの「ワゴンR」も、レーザレーダを使った自動ブレーキ「レーダーブレーキサポート」の搭載車種を4万2000円高で設定するなど、低コスト化競争が激化しています。

 ただ、EuroNCAPでは2016年から歩行者を検知する機能も評価項目に加えることを予定しており、この機能は、現状の低コストなレーザレーダでは実現できません。歩行者検知までカバーする技術の候補としては現在、(1)ミリ波レーダと単眼カメラの組み合わせ、(2)レーザレーダの改良、(3)ステレオカメラを使う、(4)単眼カメラのみで実現――の四つが挙がっています。果たしてどの技術が本命になるのか。今後の自動運転につながる技術だけに、引き続きウオッチして行きたいと思います。