スマート社会を実現するエネルギー技術の情報をお届けする「エネルギー」サイトに投稿の全記事を対象に、直近4週間(2013年6月17日~7月15日)でアクセス数が多かった20本を紹介する。最も読まれたのは、地熱発電の現状や方向性を議論した記事である。

 記事によれば、資源量では世界で第3位と豊富であるにもかかわらず、活用がまだあまり進んでいない再生可能エネルギーが日本にあるという。それが地熱である。2012年7月に導入された固定価格買取制度(FIT)によって、太陽光発電では、いわゆる「メガソーラー」の建設が各地でブームとなるなど大きな盛り上がりを見せているが、地熱はそうしたブームからは程遠い。

 地熱で発電した電力の買取価格は1kWh当たり42円(出力1万5000kW未満の場合)と、太陽光と比べても遜色ない。それなのに、なぜこのような違いが生じてしまったのだろうか。その理由の1つは、地熱発電所として有望な地域が国立公園などの中にあることによる規制や、付近の温泉地で温泉が枯渇するのではといった懸念や反対運動など起こったことである。政府が昨年(2012年)のFIT開始までほとんど地熱発電の普及促進施策を行なってこなかったことも影響を及ぼしているという。

 ただし、まったく動きがないわけでもない。例えば、別府や湯布院といった有数の温泉リゾートを抱える大分県では、既に温泉として活用されている源泉を活用した地熱バイナリーサイクル発電、俗称「温泉発電」を普及させようという気運が盛り上がってきている。別府市の「瀬戸内自然エナジー」は2013年2月に発電施設の設置を完了し、地熱バイナリーサイクル発電の営業運転を始めた(出力60kW)。同社は経済産業省の固定価格買取制度における商用地熱発電事業としては日本で最初の認定事例となった。

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Mg燃料電池による新しい太陽エネルギ活用術

 3位になったのは、マグネシウム(Mg)燃料電池による新しい太陽エネルギ活用技術を紹介した記事である。Mg燃料電池(Mg空気電池とも言う)は金属空気電池の一種で、負極にMgを、空気中の酸素を正極活物質とする1次電池。Mgが水酸化物イオンと結合し電子を放出する現象を利用しており、使い終わると負極のMgは水酸化Mgとなる。

 東北大学未来科学技術共同研究センター教授の小濱泰昭氏は、Mg燃料電池による新しい太陽エネルギ活用の姿を提唱し、実用化に向けた開発を進めている。小濱氏の構想は、日本で使ったMg燃料電池の電極を、砂漠の太陽エネルギを使って熱還元しリサイクルしようというもの。つまり、砂漠の豊富な太陽光エネルギをMgに乗せて日本に運び、使い終わったら回収して、砂漠に輸送し再びMg電極として使えるよう精錬しようというものだ。

ロボットで発電効率を向上

 4位に入ったのは、ロボットを利用して、太陽光発電の発電効率を上げる試みを紹介した記事である。ロボットによって一つひとつの太陽光発電パネルの向きを変えて、発電効率を上げる方法で、米国のメガソーラー(カリフォルニア州2カ所/アリゾナ州1カ所)で実際に稼働している。

 この太陽光追尾システムは、2010年に設立された米国のベンチャー企業QBotixが開発したもので、ロボットがレールに沿って走り、各架台の軸を横方向と縦方向に調整して太陽の方向に向かせる。40分ごとにロボットがレールを1周し、すべてのパネルの方向を調整する。1つのシステムで200架台まで対応可能。架台には5~6枚のパネルを設置できる。ロボットには、GPS(全地球測位システム)が組み込まれていて、時間と位置から太陽の方向を計算して、天候に関わらずパネルの向きを変える。

社宅を使った実証実験

 5位は、パナソニックが自社の社宅を使って始めた、「スマートマンション」の実証実験を紹介した記事である。関東(約60世帯)と関西(約40世帯)の同社の社宅で約2年間にわたって、スマートマンションの実現に向けた技術検証を実施する。

 同社によれば、電力の需給バランスが不安定になっていることから、電力の供給側だけでなく、需要側も需給バランスの最適化に寄与する必要性が生じている。機器メーカーとして、需給を調整できる家庭用の機器やシステムを提供するとともに、電力消費データなどを活用した新たな価値を提供したいとする。そのために必要な技術やノウハウを蓄積するのが、今回の実証実験の目的である。