電子部品サイトの直近1カ月のランキングを見ると、上位20位までにセンサ関連の記事が多く入った。
ほんの数年前まで読者の関心が高かったセンサは、携帯電話機やスマートフォンに搭載する慣性(モーション)センサだった。加速度センサや角速度センサ(ジャイロスコープ)、これらを統合した複合センサだ。この10年間を振り返ると、慣性センサ市場は大きく成長し、伊仏STMicroelectronics社のように売り上げを大幅に伸ばした企業が存在する(関連記事1)。同社などを勝ち組とすれば、その何倍もの負け組企業が市場から去って行った。
今回のランキングに入っているのは、店舗やオフィスなどに敷設して温度などの環境をモニタリングする「バンソウコウ・センサ」(ランキング2位の記事)、近接/照度センサ(7位)、生体センサ(8位、15位)など、建物やヒトを対象としている。民生分野向けではなく産業分野向けである。こうしたセンサには、勝ち組と負け組の双方が、次の大市場になると期待している(関連記事2)。
こうしたセンサは、社会インフラや医療など産業分野向け「ソーシャル・デバイス」の一つであり、実現が期待されているのは、いたる所に(ubiquitous)、あり余るほど(abundance)、はりめぐらされたセンサ・ネットワークだ。ここへきて多くの政府やITベンダが導入を望んでおり、潜在需要は大きい。政府が望んでいる理由は、日本をはじめとする先進国が、老朽化インフラを高齢化社会で維持していくために、既存インフラの効率的な保守を実現する必要に迫られていることによる。新興国の政府もいずれ訪れる先進国と同じ課題に対応したいと考えるようになっている。世界各国でセンサ・ネットワークによる保守体制が長期的には不可欠となる可能性が高い。ITベンダは、ビッグデータ解析の入力としてセンサ・データを活用したいと考えており(関連記事3)、あり余るほどのセンサがいたる所に存在することを望んでいるようだ。