ソーシャル・デバイスのイメージ。社会的な課題の解決にセンサ/アクチュエータ、ビッグデータなどを活用する。写真は、左上が富士電機の振動センサ、左下がこのセンサを取り付けた同社ビル。中央上は豊橋技術科学大学の農業用養分センサ、中央下はセンサを設置した畑。右上は人体の神経などに作用できるドイツUniversity of Bremenの電極、右下はロームの近赤外光イメージ・センサで撮影した人の指。(写真:富士電機、豊橋技術科学大学、University of Bremen、ローム)
ソーシャル・デバイスのイメージ。社会的な課題の解決にセンサ/アクチュエータ、ビッグデータなどを活用する。写真は、左上が富士電機の振動センサ、左下がこのセンサを取り付けた同社ビル。中央上は豊橋技術科学大学の農業用養分センサ、中央下はセンサを設置した畑。右上は人体の神経などに作用できるドイツUniversity of Bremenの電極、右下はロームの近赤外光イメージ・センサで撮影した人の指。(写真:富士電機、豊橋技術科学大学、University of Bremen、ローム)
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 「日本は課題先進国。課題解決先進国になれば躍進できる」。東京大学の前総長で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏は、以前からこう主張している(例えば、日経ビジネスオンラインの「“課題先進国”はチャンスが満載」)。資源・食糧の不足やインフラ老朽化、高齢化といった社会的課題の解決が、すなわち新産業の創出につながるという意味だ。「ソーシャル・デバイス」は、社会的課題の解決を通して、産業界にビジネス・チャンスをもたらす可能性がある。

 ソーシャル・デバイスは、社会的課題の解決を目的に、ヒト、住宅、オフィス、自動車、社会インフラ、地球環境などと相互作用(センシング、プロセシング、アクチュエーション)して、これらを機能拡大・能力向上させるデバイスを指す(関連記事1)。トンネルや橋などに歪みセンサを付けて劣化を診断し、事故を未然に防ごうとする構造物ヘルス・モニタリング・システムのコア・デバイス(センサや無線通信機)は代表例だ。節電やCO2排出量削減のカギとなる性能を備えた省エネ半導体や高効率モーターもソーシャル・デバイスと呼べる。センサ・ネットワークやM2M(machine to machine)の主要な構成デバイスも社会的課題を解決する目的ならソーシャル・デバイスである。

 「ソーシャル」は、「社会的な」「社交的な」と訳されるが、後に続く言葉によってさまざまな意味を持つ。「ソーシャル・ダンス」「ソーシャル・スキル」は「社交的な」。「ソーシャル・ワーカー」「ソーシャル・サービス」は「社会福祉的な」。「ソーシャル・ネットワーク」は特にユーザー間コミュニケーションに着目した「社会的な」という意味である。ソーシャル・デバイスのソーシャルは、「ソーシャル・ビジネス」「ソーシャル・アントレプレナー」と同じく「社会的課題に向き合った」の意味合いだ。