シリコンバレーの技術業界では、通信機能を自動車に加えること、いわゆる「コネクテッド・カー」の話題で賑わっている。コネクテッド・カーは、様々な組み込み機器にインターネット接続を与える「IoT(Internet of things)」と「IoE(Internet of everything)」の市場の一部だと見えている。米シリコンバレーに研究所を持つトヨタやBMW社、Volkswagen社、GM社、Mercedes-Benz社、ホンダなどに加えて、Ford社も2012年6月に研究所を設立した。日産はさらに2013年2月に2番目の研究所を開いた(発表資料)。私がが出会った人は、自動車メーカーは以前よりも第三者が開発した技術を採用することにオープンな考えを持つようになっており、自動車関連技術のベンチャー企業に投資するベンチャー・ファンドを設立する動きも、シリコンバレーで活動になっているという。

 技術業界と自動車業界が最も期待を集めているのが、Google社などが手かけているロボットが運転させる自動車(ロボット自動車)の技術である。2013年6月に開かれたFujitsu Labs of America社のイベントでは、シリコンバレーにあるSingularity大学のBrad Templeton教授がロボット自動車のプレゼンテーションを行った。Templeton氏はGoogle社のロボット自動車プロジェクトにコンサルタントとして関わり、自動車とロボットの組み合わせに対して「ソフトウエアが加えるモノの中に、最も社会の改善に有力なモノは自動車だと思っている」と宣言した。米国政府の指摘によると、1年間に自動車事故で2300億米ドルの損失を出しており、ロボット自動車がこの損失を引き下げる可能性がある。これに加えて、ロボット自動車の燃費は一般自動車より優れているはずだ。自動的に駐車を効率よくできることによって、駐車場に割り当てる土地を減らす可能性もあるという。配達用トラックのロボット化による、配送ネットワークの改善に繋がることも見込まれる。

 安全運転を支えるため、ロボット自動車の主な機能はネットワーク接続に頼らないローカル環境でアルゴリズムを処理する。だが、ロボット自動車でもV2V(vehicle to vehicle)やV2I(vehicle to infrastructure)の通信環境は、役割を果たすと考えている。例えば、高速道路ではV2V通信で車間距離を短く保ってロボット自動車同士を並べて走行させることが想定されている。ロボット自動車の安全運転の判断を即座に処理できる低価格なコンピューティング技術は、コネクテッド・カーの機能を支えるプラットフォームになるだろう。