決められたスペースに、いかに有効な機能性を持たせるか。開発者が頭を悩ませる製品開発の永遠の命題でしょう。

 スペースは無限ではありません。ある時は、どうしても必要な機能を入れるために、寝る間も惜しんで小型・軽量化の技術を開発しなければならない。そして、ある時は、我が子のようにかわいい新機能の導入を泣く泣くあきらめなければならないことも。

 古今東西、ヒット商品に共通する大切な要素は「削ること」です。体積を削る、重さを削る、機能を削る。Tech-On!のテーマサイト「家電・PC」の2013年6月11日~7月8日、ほぼ1カ月間のアクセス・ランキングで上位に食い込んだ記事のキーワードは、「削ることの難しさ」でした。

まずは、サイズありき

 ランキングの1位は、『日経エレクトロニクス』の根津禎記者による「29週連続首位の小型複合機は、いかにして生まれたのか」。発売から9カ月もの間、国内の複合機・プリンター市場で首位争いを続けるセイコーエプソンの製品について、ヒットにつながった小型・軽量化の秘密を探った力作です。

 削った体積は、前機種比で実に4割。設置面積も約38%削減しました。小型化を目指した前機種が「まだ大きい」というユーザーの声を聞き、さらなる小型化に腐心したことが人気を呼ぶ秘訣だったというわけです。

 根津記者の記事によれば、開発の方針は、まずはサイズありき。とにかく小さくするために、開発体制も変更し、全体最適を追求したと言います。技術面では、紙送りの機構をはじめ、インク・カートリッジやプリント・ヘッド、プリント配線基板も抜本から見直しました。

 印刷性能を犠牲にしない形での機構の工夫は、小型・軽量化を得意としてきた日本メーカーの面目躍如というところでしょうか。開発者の苦心の跡を、写真を交えて詳細に解説した興味深い記事です。