数カ月前、米国で“クリーン”な太陽光発電産業を揺るがすニュースが話題になった。その内容は、太陽電池のライフサイクル・アセスメントに関するデータの中に、生産時に発生した廃棄物の処理や輸送に関わるカーボン・フットプリントが含まれていないというものだった。このニュースをキッカケに、太陽光発電産業の生産者責任について、注目が集まるようになっている。

 カリフォルニア州の有害物質規制局(DTSC:Department of Toxic Substances Control)は、カリフォルニア州に工場を持つ17の太陽光発電関連企業の廃棄物処理データを公表した。それによると、2007年から2011年上半期の間に、合計で約465万ポンドのヘドロと汚染水を生み出していた。これらの企業には、オバマ政権から多額の条件付き融資保障を得た後に破綻した米Solyndra社や、複数の太陽光発電関連ベンチャー企業も含まれていた。

 廃棄物のうち約97%はカリフォルニア州内で処理されたが、約14万ポンドは遠方にあるアーカンソー州やミネソタ州など9つの州で処理されたという。この輸送に使用された化石燃料から排出されたCO2を、これらの企業はライフサイクル・アセスメントに含めていなかった、としている。

 このニュースの後に、Solyndra社と同じく条件付き融資保障を受けた後に破綻した、コロラド州に生産工場を持つ米Abound Solar社の廃棄物もニュースになった。Abound Solar社は、世界最大の太陽電池メーカーである米First Solar社と同じテルル化カドミウム (CdTe) を用いたモジュールを生産していた。

 Abound Solar社は2012年に破綻。その後コロラド州の健康環境管理局(Department of Public Health and Environment)が、Abound Solar社の倉庫に、在庫や不良品など合わせて約十万枚のCdTe型太陽電池モジュールを発見した。さらに別の倉庫に、カドミウム(Cd)を含む液体が入ったドラム缶が、処理されずにそのまま放置されていたのを見つけ、Abound Solar社に処理を命じた。これらの非有害・有害廃棄物をすべて合わせた処理費は、約220万米ドルに及ぶと予想されている。

 Abound Solar社の破産管財人は、現在CdTe型太陽電池モジュールの引き取り手を探すとともに、廃棄物処理の競売入札者の調査をしている。同じ技術を用いるFirst Solar社が、太陽光発電業界の「メンツを守るため」、Abound Solar社の廃棄物処理と太陽電池モジュールのリサイクルを引き受けると、Abound Solar社の破産管財人に申し出た。

 CdTe型太陽電池モジュールを製造するFirst Solar社は自発的に、製造から販売、回収、廃棄のクローズド・サイクルを構築し、外部環境にCdを出さないビジネス・モデルを展開している。このために、「米国とドイツ、マレーシアで、廃棄物とモジュールのリサイクル工場を運営している」(First Solar社 Global Communications Director、Steve Krum氏)。この回収・リサイクルによって、約95%のCdと約90%のガラスは新しいモジュールに再利用が可能になるとする。