プラスチックの射出成形機、包装機械、印刷機械など、産業用機械の中には複数の回転軸を同時に関連させて変化させる、いわゆる多軸同期制御が必要な機械があります。このアプリケーションにも産業用ネットワークが使われています。

 同期を取らなくてはいけないアプリケーションとして、分かりやすい例は印刷機械でしょう。皆さんがよく目にする広告、カタログなどのカラープリントでは、数万色もの色が使われています。しかし、印刷機では数万色の色を1つずつ塗って、カラー印刷をするわけではなく、青、赤、黄、黒の4色の色を塗る軸がそれぞれ回転して紙に色を塗り、この色を重ね合わせることで、数万もの色を出すようにしています。

 色は順番に塗られていきますので、印刷機械はどこが印刷の始点かを理解し、かつ同じ回転数で複数の軸を回転させないと色ずれが生じます。少し前までは、幾つかの軸を同期させて回転させるためには、機械式(ギア、クラッチ、カムなど)が使われていました。この機械式ですと、以下のように幾つか困った点があります。

(1)機械の精度によって、同期に誤差が出る
(2)調整が難しい
(3)経年変化が出る
(4)大きなモータを主軸に使うので価格が高くなる

 この機械式のデメリットを改善するために、各軸にそれぞれ小さなモータを付け、ネットワークによってモータ間の回転を同期させながら運転するアプケーションが1990年代の半ばくらいからマーケットに出てきました。

 印刷機の同期は高精度が要求されるため、当初はそれぞれの回転機器の会社独自の専用のネットワークが使用されました。独自ネットワークですから、その会社の製品しかそのネットワークにつながりません。さらに2000年代に入ると、高精度が要求されるアプリケーションにもオープンな、つまりさまざまなメーカーの製品をつなぐことができるネットワークが使われ始めました。