パラメトリックとダイレクトの共存

 ところが、米PTC社は2007年にCoCreate社を買収し、それ以来両方式の融合を目指して開発を進めた。その1つとして、ダイレクト・モデリングをパラメトリック・モデリングによる3Dモデルの上で稼働させる機能を製品化している。「Creo Parametric」の拡張機能「Creo Flexible Modeling Extension(以下Flexible Modeling)」である。

 Creo Parametricのモデルは拘束条件の積み重ね(ヒストリ)だが、Flexible Modelingでは拘束条件を“無視”したかのような編集が可能である。例えば、リブの位置を拘束条件によらずに動かせる。この移動の結果、ヒストリは破壊されるわけではなく、「移動」という項目がヒストリに加わる。この「移動」に含まれる情報は、実は「リブの除去→新たなリブの作成」であり、元のリブのヒストリは残る。従って、ヒストリを戻す(ヒストリの適用による再生を途中で止める)操作によって、リブを移動する前の状態にすることも容易である()。

図●パラメトリック・モデリングによるCADでのダイレクト・モデリング的な操作
図●パラメトリック・モデリングによるCADでのダイレクト・モデリング的な操作
パラメトリック・モデリングで作成したヒストリ付きのCADデータ(a)に対し、リブをマウスでドラッグするというダイレクト・モデリング的な操作を加える(b)。この操作はCADが自動的にヒストリとして残すため、あとからヒストリの変更操作で取り消して元の状態に戻すことも可能になる(c)。ヒストリはCreo Parametricの表現を用いて本誌が作成。
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 この方法ではヒストリは維持するが、ダイレクト・モデリングへの切り替え時にヒストリの情報を放棄し、形状情報のみを引き継いで以後のモデリングを継続する方式のCADもある。

 以上はヒストリを持つモデルに対してダイレクト・モデリングの操作を実行するものだが、逆にヒストリを持たないモデルに対して部分的にパラメトリック・モデリングを適用できるCADもある。具体的には、穴の内面や突起の側面などをユーザーが選ぶと、CADが自動的にその部分に対する拘束条件を新たに決めて、ヒストリを構成する。部品などの形状全体を部分形状に自動で切り分け、さらにヒストリで構成し直す機能もある。