形状を直接押したり引いたり

 一方のダイレクト・モデリングは、拘束条件に頼らずに形状を作成・変更する技術である。辺や面を指定して、これを移動することによって変形させる。この方法は1990年代に独CoCreate Software社(当時)などで開発が進んだ。

 部品形状の変形時には、図形の中である部分の頂点・辺・面をまとめて動かし、かつそれ以外の部分の頂点・辺・面を固定しておく必要がある。コンピュータにとっては、この移動対象となる頂点・辺・面の集まりを、形状のみからユーザーの意図に沿って判定しなければならないので、簡単にはできない。ダイレクト・モデリングの実現のためには、この決定方法をさまざまな状況に適用可能にする必要があった。パラメトリック・モデリングでは、この移動対象の決定は拘束条件から明確に決まるため、コンピュータにとっては負荷が少なくて済む。

 2000年代中ごろまで、パラメトリック・モデリングとダイレクト・モデリングは互いに相容れない対照的な方法であるとして、どちらの方式を採用しているかは、CADを選択するときに検討すべき重要な項目の1つとなっていた。