固有技術に関する教育

 「固有技術」に関する教育としては、製品技術、評価技術、生産技術、開発ツール、技能などが挙げられる。

 このうち「製品技術」の教育は、製品を成立させ、目標とする機能・性能を実現するための技術を身に付ける教育である。そこでの3Dデータ活用の方向性としては、製品設計の思考を3Dのイメージで補助すること、あるいはクリアランスや干渉のチェックといった作業的な業務を自動化することが挙げられる。裏返すと、製品設計の思考過程が終わった形状を3Dモデル化するだけでは、このような活用はできていないことになる。従って、設計の思考プロセスに沿った3Dモデリングの手順を理解する必要があり、本教育内容にもこれを織り込むとよいだろう。

 次に「評価技術」の教育は、設計された製品が機能・性能、QCD水準、安定性・信頼性などの目標を満たしているか、判断する技術を身に付けるための教育である。評価は、決められた規格値を満たしているかを判定する検査とは異なり、予測行為を含むため、予測技術も必要となる。よく挙げられる例だが、入試や採用面接は非常にイメージがしやすい評価の1つだ。短時間のテストや面接の結果のみから、志願者の将来も含めた能力を判断するには技術が必要なのである。

 評価技術向上に向けての3Dデータ活用の方向性としては、CAEなどによるシミュレーションがある。そこで、シミュレーションの原理やシミュレーションと実験の差異の確認方法、差異からのシミュレーション精度向上方法などを本教育内容に織り込むとよい。なお、シミュレーションと実験の差異の教育では、数値の差異だけでなく、体験の差異も含めることをお勧めする。コンピュータ上では図形が変形するだけだが、実際にある企業で実践されている例であり、非常に効果的、かつ大切なことであると考えられるため、参考にしていただきたい。

 「生産技術」の教育は、製品を造る技術を身に付けるための教育である。それは工程設計、設備設計、金型設計、作業設計などの技術を含んでいる。3Dデータ活用の方向性としては、これらの設計の思考の補助や作業の自動化、シミュレーションなどがあるので、金型製作や組立作業に関する知識、シミュレーションと実際の差異に関する教育を織り込むとよいだろう。

 「開発ツール」の教育は、開発を推進する際に使用するツールや設備に関する教育である。ツールとしては、CAD、CAE、軽量3Dアプリケーション、3Dプリンタ、CAM、E-BOM、プロジェクト管理ツール、試作品製作設備、評価設備などが挙げられる。一般的に、これらの操作方法が教育内容から漏れていることはほとんどない。

 「技能」の教育は、“知っている状態”から“実施できる状態”に変えるための教育である。本教育としては、実務を題材とした実践教育を織り込むとよい。これまでに説明した教育内容を例に挙げると、実際の開発テーマの中で、設計の思考プロセスに沿ったモデリングを行ってみる。あるいはCAE結果と実験の差異分析を行ってみる、といったイメージである。