新しいユーザー層の獲得で、市場拡大の好機

 一眼レフ・カメラのミラーボックスやOVFは、銀塩カメラ時代の名残だ。銀塩カメラでは、レンズを通して銀塩フィルムに結像される被写体を目視で確認するためにOVFを採用していた。跳ね上げ式ミラーを用いて銀塩フィルムに向かう光を遮り、反射光をペンタプリズムを用いてOVFに導く。被写体を確認する際に銀塩フィルムが感光しないようにするための工夫だ。

カメラ・メーカーは、女性ユーザーの確保に注力している。写真のカメラは、富士フイルムが2013年7月に発売するミラーレス・カメラの新機種「FUJIFLM X-M1」。APS-Cサイズで有効画素数が1630万画素のCMOSセンサを搭載。外形寸法は116.9mm×66.5mm×39.0mmと従来機種より小型にし、無線LAN機能を載せた。
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 結像する先が撮像素子であれば、これらの光学機構は必須ではない。撮像素子は、銀塩フィルムと違って何度でもリフレッシュできるからだ。カメラのデジタル化が進展した後もミラーボックスやOVFが残り続けた理由は、カメラ・メーカーがこれらの機構を前提にした銀塩カメラ時代の交換レンズの資産を生かすためである。

 ミラーボックスとOVFを取り去ることで、レンズ交換式カメラの設計や筐体デザインは自由度が増す。ミラーレス・カメラでは、ほとんどがOVFの代わりに電子式ファインダー(EVF:electric view finder)や背面の液晶パネルで撮像素子が捉えた像の出力を表示し、被写体を確認できる仕組みを備えている。

 一般にEVFの体積や重さはOVFとミラーボックスの半分以下で済むと言われている。EVFを省き、液晶パネルだけにすればさらに小さくできる。ミラーレス・カメラの部品点数は、一眼レフ・カメラよりも3割ほど削減できるとの見方が強い。つまり、ミラーレス・カメラは一眼レフ・カメラに比べて圧倒的に「小さく、軽く」しやすいわけだ。

 この小型軽量という特徴は、男性ユーザーが中心だったレンズ交換式カメラの世界で新しいユーザー獲得に一役買った。例えば、「カメラ女子」と呼ばれる女性ユーザーの増加は象徴的な事象だ。日常的に持ち歩けるサイズのカメラで手軽にキレイな写真を撮りたいというニーズを吸い上げた。このムーブメントは、カメラだけではなく、かわいいストラップやカメラケースといった周辺アクセサリ市場の活性化にもつながっている。

カメラ女子に人気の写真店「ポパイカメラ」。東京の私鉄・東急東横線の自由が丘駅から徒歩2分ほどにある。店内には、カメラや写真関連のかわいい小物が並ぶ。
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