品ぞろえが増え、競争は激しく

 スマホとSNSの普及で、写真は生活者のコミュニケーション・ツールになった。スマホ市場で世界トップのSamsung社としては、携帯端末技術の勢いとブランド力をカメラ分野でも積極的に活用し、市場シェアを確保したいというところだろう。

 「世界一になる」と宣言した3年前に同社がその「原動力」と指名した製品分野こそが、ミラーレス・カメラだった。今回の機種は、「世界一を目指す準備が整った」という同社の意思表示かもしれない。スマホの普及でコンパクト・カメラを中心にデジタル・カメラの市場規模は急速にしぼんでいる。その中でミラーレス・カメラは、今後の市場拡大への期待を一身に受けている製品分野だ。

 この1~2年ほどで大手カメラ・メーカーによる新規参入が相次ぎ、ミラーレス・カメラの品ぞろえは一気に増えた。国内ではレンズ交換式カメラの販売台数のうち、ミラーレス機の比率が半分を超えている。この勢いは今後、経済成長が著しいアジアの新興国を中心に世界にも広がりそうである。その意味で今回のSamsung社による提案は、「ミラーレス」を軸にしたカメラの新しい競争で号砲を鳴らす出来事の一つになりそうだ。

主要部品を省いたことで設計の自由度が増す

ペンタックスリコーイメージングが2013年7月に発売するミラーレス・カメラの新機種「PENTAX Q7」。本体の外形寸法は約102mm×58mm×33.5mmと小さい。前機種の「Q10」と同じ外形寸法の筐体に、大きいサイズの撮像素子を収めた。撮像素子は、有効画素数が約1240万画素の1/1.7型CMOSセンサ。前機種のセンサは、1/2.3型だった。
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 ミラーレス・カメラの一般的な定義が「レンズ交換式の一眼レフ・カメラが備えている機械式の主要機構部を省いた機種」であることは既に述べた。一眼レフ・カメラには存在するが、ミラーレス・カメラにはない主要機構は大きく二つある。それが「ミラーレス」の言葉の由来になっている。

 省いた主要機構の一つは、ミラーボックス。もう一つは、光学式ファインダー(OVF:optical view finder)である。

 このうち、ミラーボックスはレンズに入射した光を撮像素子やOVFに導くための振り分け機構だ。

 一眼レフ・カメラでは、撮影者が構図を決める際にレンズを通って撮像素子に向かう光を鏡で遮る。ミラーボックス内の跳ね上げ式ミラー(鏡)に反射した光はOVFに導かれ、それを覗き込むことで構図を決める。撮影時には鏡が跳ね上がり、レンズを通った光が撮像素子に入射する仕組みだ。

 これまで存在していたミラーボックスを省いた、つまり「ミラーがない構造」であることから「ミラーレス」と呼ばれているというわけである。