韓国メーカーが手を挙げる

 商品企画部の畑野一良らを悩ませていたのは,カーナビに内蔵するデータ通信モジュールを開発してくれる部品メーカーが見つからないことだった。どのメーカーに足を運んでも興味は示すものの,最後には及び腰になった。「パイオニアは,本気で通信カーナビを製品化するのか」「通信カーナビは,どの程度売る計画なのか。データ通信モジュールの数量を,パイオニアはある程度保証してくれるのか」――。

 膠着した議論を吹き飛ばすためには,東京モーターショーは絶好の機会だった。パイオニアのやる気を見せつけて,何としても部品メーカーを振り向かせたい。ブースに立った説明員たちはデモを見にきた来場者に対して,一生懸命説明した。たとえそれがライバル・メーカーの技術者だったとしても…。

 パイオニアのブースには老若男女取り混ぜて,大勢の来場者が訪れた。その中に開発の行方を左右する人物がいたことに,説明員は一人として気付かなかった。

本橋実氏と岩動恭二氏
本橋実氏と岩動恭二氏
パイオニアの本橋氏(写真左)や岩動氏(同右),KDDIの原口英之氏らはデータ通信モジュールを求めて,韓国へ出向いた。(写真:柳生貴也)