えっ,ホントにホント?

 「うん。なかなか面白いですね。将来性も高そうですしね」

 出てきた人が変わったとはいえ,前の担当者と全く同じ反応だ。畑野の頭に1年前のやりとりが蘇る。うーむ。嫌な予感がする。やはり,今回もダメか…。

 畑野は続ける。

 「ありがとうございます。で,今お話ししたような通信カーナビを実現するには,データ通信モジュールをカーナビに標準搭載する必要がありまして」

 「ふーむ」

 「どうでしょう? 我々に協力してくださいませんか」

 さあ,今度の相手はどう反応するか。畑野は原口の目をじーっと見つめながら,答えを待った。原口の口が動く。

 「ぜひ,一緒にやりましょう」

 「……」

 えっ,何? 今,何て言った?

 「はい?」

 「ぜひ,ウチにやらせてください」

 「はぁ」

 「じゃあ,よろしくお願いします」

 「は,はい…。こちらこそ,お願いいたします」

 畑野はハトが豆鉄砲を食ったように,呆然と原口の顔を見ていた。

(文中敬称略)