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これじゃあ、使い物にならない

新分野を切り開いた熱い技術者魂の物語(第6話)

田野倉保雄
2013/08/27 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2003年3月30日号 、pp.203-206 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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2000年春,パイオニアの畑野一良の命を受けた
インクリメントPの中野年章と岡村淳一は,通信カーナビ向けの
新しい地図フォーマットの開発に取り組む。
これと並行して,畑野は通信事業者3社に乗り込んだ。
畑野が思い描く通信カーナビを実現するには
通信事業者の協力が不可欠だからだ。
だが,どこも返事が芳しくない。
畑野の構想は早くもほころび始めた。

「結構,いけるねえ」

 2001年6月――。開発着手からほぼ1年が経過した。中野や岡村らの地道な取り組みは,ついに新しい地図フォーマット「iフォーマット」の原型を完成に導いた。同じく6月,パイオニアはハード・ディスク装置(HDD)を搭載した日本初のカーナビ「カロッツェリアHDD[サイバーナビ]」の発売を迎える。

 「一体,どんな感じになるんだろう。早く見たいな…」。畑野は,はやる気持ちを抑えられずにいた。iフォーマットに対応するように手直ししたHDDカーナビを実車に搭載し,試験走行を行うのだ。iフォーマットにのっとった地図データを走行中のカーナビに無事に送ることができるのか,本当にカーナビ画面上に地図をきちんと映し出すことができるのか…。

 畑野は中野を引き連れ,HDDカーナビを搭載したクルマに乗り込み,エンジンをかける。慌ただしく手持ちの携帯電話機をカーナビに接続して,カーナビのスイッチを入れて目的地を設定する。「よし,これでOK」。緊張しつつ,ブレーキ・ペダルからゆっくり足を離すと,クルマがスルスルと動き始めた。

畑野一良氏
畑野一良氏
パイオニアの畑野氏は,KDDIの原口氏とすぐに意気投合したことで,カーナビへのデータ通信モジュール内蔵の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。(写真:柳生貴也)

 公道に出て,アクセルを強く踏む。

 「うん,なかなかいいじゃないか」

 畑野は思わずうなる。1年前に見たシミュレーションとは全く違う。クルマが走行するに従って,地図が次々と滑らかに変わっていく。

 「結構,いけるねえ」

 「予想以上のパフォーマンスです」

 畑野と中野のほおは,次第に緩んでいった。

 1時間の試験走行を終えた畑野は,いかにも満足げだった。クルマを止めて,携帯電話機をカーナビから取り外す。

 「さてっと…」

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