5万円カーナビの構想について
カンパニーのプレジデントへのプレゼンをこなした
パイオニアの畑野一郎。
ハードルを一つクリアした彼は、10年来の付き合いである
インクリメントPの清水敏彦を訪ねた。
前置きが長い畑野の様子に清水は、
今日の相談が重要案件であることを感じ取っていた。
「面白いと思うよ」
一気に説明を終えた畑野は,清水の顔色をうかがいながら恐る恐る尋ねる。
「だいたいこんな感じなんですが…。どうでしょうかねえ,清水さん」
清水の口が動く。
「面白いと思うよ」
「えっ,本当ですか」
「うん,面白いんじゃない?」
畑野から思わず笑みがこぼれた。うれしかった。すごくうれしかった。清水がアイデアを認めてくれた。自分は間違っていなかったのだ。
勢いに乗った畑野は,間髪置かず続ける。
「それでですねえ,ぜひ清水さんのところに協力していただきたいんですが」
「いいよ。地図データを送る技術のところだろ」
「そうです,そうです」
「社運をかけて,っていうとちょっと大げさかもしれないけど,ウチにとっても大きな話になりそうな気がする」
「はい。うまくいけば,面白いことができるかと…」
「そんな感じだね。じゃあ,ウチのエンジニアで優秀なのがいるから,彼らを投入するよ」
「あ,ありがとうございます」
即決だった。清水は畑野の話を聞きながら直感した。これはモノになりそうだ,と。単に内容が面白いだけではない。何を隠そう,清水自身も畑野とほぼ同じことを考えていたのだ。