3人の宇宙飛行士を乗せた中国の有人宇宙船「神舟10号」が2013年6月23日、15日間の任務を終えて、内モンゴル自治区の草原に無事帰還した。中国で5回目の有人宇宙飛行となった今回は、中国史上2人目の女性宇宙飛行士となった王亜平さんが、地上の教育機関などと結んで中国として初の宇宙授業を行った他、2011年に打ち上げられた宇宙ステーション実験機「天宮1号」との自動・手動のドッキングにも成功した。専門家の間では、神舟10号が挙げた成果を受け、中国の宇宙開発が本格的な宇宙ステーション建設の段階に入ると評価する向きもある。

 さて、今回の神舟10号では、3人の宇宙飛行士が使用した宇宙船内のシートの開発に、3Dプリンタが活用されたということでも話題を集めている。

 『中関村在線』(2013年6月27日付)など複数の中国メディアによると、開発を手がけたのは天津大学快速成形センターだ。

 同センターの崔国起主任によると、2003年に中国初の有人宇宙飛行を成功させた神舟5号の設計と製造を担当していた機関の関係者らが、1998年に天津大学快速成形センターを訪れ、崔氏らに、宇宙船内で使用するシートの研究・開発(R&D)を要請したのが始まり。以来、崔氏と同センターでは15年にわたり、神舟号のシートのR&Dを手がけてきた。

 離発着時に発生する強烈なGや衝撃から乗組員の体を守るために、神舟10号ではシートの形状を、曲線を多用したバスタブのようにデザインし、材質にはポリウレタンなどを使用しているという。光学測定器を使って乗組員の体を100万カ所近く採寸した後、データをコンピュータに入力し、設計をして、3次元CADのデータにする。かつてはここから、型を造り、模型を造って、模型のテストを繰り返した後、OKとなれば最終的な型を造った。それが、今回は3Dプリンタを使うことにより、3次元CADから直接、3Dプリンタを使って出力することができた。これにより、テストの段階で金型を造る手間を省くことができ、開発の大幅な省力化とスピードアップを図れたということだ。

 さて、3Dプリンタを活用する動きは、製造業にも広がり始めている。2013年6月16日付『日本経済新聞』は、パナソニックが樹脂部品の生産に必要な金型を3Dプリンタで造ることで、生産コストを3割程度削減できるとして、家電の大量生産に初めて、3Dプリンタを導入すると報道。同2月にはオバマ米大統領が一般教書演説の中で、製造業に新たな革命を起こすものとして、3Dプリントを重視する姿勢を見せている。