2013年5月中旬、パワー素子やパワー・エレクトロニクス機器分野の世界最大級のイベント「PCIM Europe 2013」を取材するため、ドイツ・ニュルンベルクに飛んだ。同イベントの発表内容については、Tech-On!に掲載した他、日経エレクトロニクス2013年6月24日号に掲載しているので、ご興味のある方はぜひご一読いただければ幸いである。と、宣伝はさておき、記事では書けなかったが、ドイツ出張で印象に残った出来事を記したい。

銀河を見つめる


 ドイツは日本と同じように、鉄道インフラが充実している国である。しかも、ほぼ時刻通りに到着する。そのため、取材先や街中での移動はもちろん、空港と中心街との行き来にも鉄道を利用する。鉄道内で見られる光景も日本とほぼ同じだ。

 友人や仲間などと一緒の乗客は、会話を楽しんでいる。治安がいいのか、子供たちだけで乗車している場合もある。この点も日本に似ている。一人で乗っている人の行動も同じだ。大半がスマートフォンをはじめとする携帯電話機を食い入るように見つめている。

 ただ、日本と大きく異なるのは、携帯電話機の種類である。日本の場合は、米Apple社の「iPhone」シリーズを操作している乗客をよく目にする。しかし、筆者がドイツで乗った列車で目にしたのは、韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「GALAXY」シリーズばかり。時折、従来型の携帯電話機(いわゆるフィーチャーフォン)も、Samsung製を持つ乗客が多い。周知の事実とはいえ、携帯電話機におけるSamsungブランドの強さを改めて思い知った。

インテル、入ってる


 もう一つ印象的だったのが、ドイツInfineon Technologies社の本社である。ミュンヘンから鉄道で約15分程度。最寄り駅に着くと目の前に本社が見える。しかも、駅から本社までは、専用の歩道が整備されている。訪問した当日は、あいにくの雨模様であったが、歩道のところどころに屋根が付いており、あまり濡れずに済んだ。
最寄り駅からInfineon本社までの歩道。屋根があり、雨に降られてもあまり濡れない。
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 本社の途中には保育園がある。Infineon社の広報担当者によれば、Infineon社員以外も、子供を預けているという。需要が多く、今後拡張していく計画だそうだ。
保育園
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 Infineon社の本社は「Campeon」と呼ばれている。「Campus」の「Camp」と、Infineonの「eon」を足し合わせた造語である。その名のとおり、大学のキャンパスを思わせる。敷地内には複数のビルが建ち、その周囲は人口の池で囲まれている。
Campeon
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建物の周囲にある人工の池
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 建物は、美術や建築などの教育の場だったドイツの「バウハウス」出身者が設計したような、シンプルな外観と構造を備える。建物もあまり高くなく、敷地内を歩いていると開放感がある。

 正直、うらやましい。日経BP社もこんなオフィスだったら、仕事の生産性が上がるだろう。赤色好きの某軍人並みに、通常の3倍の速度で記事が書けるかもしれない。

Campeon内の建物
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 ちなみに、Campeon内には、米Intel社の無線通信などを手掛ける「Mobile Communications」部門のオフィスがある。もちろん、Infineon社と共同で取り組んでいるプロジェクトがあるという。

Intel社が入っている建物
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 最後にPCIM Europe 2013の話題を少し。Infineon社は、PCIMに合わせて、Super Junction(SJ)構造を備えたMOSFETや、IGBTモジュールなどの新製品を多数発表したこともあり、多くの来場者が訪れていた。

 IGBTモジュールの分野で、Infineon社とシェア争いを繰り広げている三菱電機も、同モジュールの新技術や新製品を発表。PCIM Europeでは、展示会の他、カンファレンスも併設されている。このカンファレンスでは、パワー半導体の有名メーカーが軒並み登壇する。しかし今回、三菱電機は登壇しなかった。そういった経緯もあり、三菱電機のブースや、同ブース内で開かれた講演には多くの参加者が詰め掛けていた。

 こうしたPCIM Europeの話題は、2013年6月28日のセミナーで紹介する予定だ。加えて、同年5月末に石川県金沢市で開催されたパワー半導体に関する国際会議「ISPSD 2013」の話題についても、取り上げたいと思っている。