Macの米国製造については、当コラムでも前回「製麺ロボットとMacのご用命はホンハイ米国工場まで?!」と題して触れたばかり。簡単におさらいすると、Apple社のティム・クック最高経営責任者(CEO)が2013年5月21日(米国時間)、米上院の公聴会で、米テキサス州でMacを製造すると公表。同社が同年1月末に公開した同社製品の最終組立地17カ所のリストで米国に生産拠点を置くのは台湾Quanta Computer社(広達電脳)のみだが、所在地がカリフォルニア州フリーモントだったことから、テキサス州ヒューストンに工場を持つEMS世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、Mac製造の米国回帰を担う主力業者だとの見方が強まった、という内容だった。

 ところが、Mac Proの登場とともに、同機の米国製造について、台湾メディアからフォックスコン、Quanta Computer社以外の名前が出てきた。EMS世界第2位のシンガポールFlextronics社である(図2)。

図2●上海郊外の嘉定区にあるFlextronics上海工場
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 台湾紙『経済日報』は2013年6月12日(台湾時間)、台湾系証券会社アナリストの話として、Mac Pro現行モデルはEMS世界最大手のフォックスコンが生産を手がけきたが、今回発表された次世代モデルはFlextronics社が受注したと報じたのだ。ちなみに、同紙は、新型MacBook Airのアセンブリを実施するのはQuanta Computer社だとしている。

 Flextronics社はApple社の最終組み立てリスト17社に入っていない。このため今回、Mac Proの生産絡みで名前が出たことについて、市場や業界では意外なこととして受け止める向きが多いようだ。ただ、Flextronics社は最近、スマートフォンで米国生産に取り組み始めている。

 米Motorola Mobility社は2013年5月28日(米国時間)、同社として初めて、スマートフォンの製造を米国で行うことを明らかにした。同年秋をメドに投入を計画する次世代旗艦モデル「Moto X」がその対象で、実際の生産はFlextronics社に委託すると表明した。そして、Moto Xの生産地として挙げたフォートワース工場は、Apple社のクックCEOがMacの生産予定地とした挙げたテキサス州にあるのだ。

 台湾の経済紙『工商時報』(2013年5月31日付)によると、Motorola Mobility社のフォートワース工場はかつてフィンランドNokia社の携帯電話工場だったところ。Flextronics社は自社の求人サイトで同年5月10日以降、フォートワース工場の最終工程の機械オペレーターや購買担当などを募集している。

 Flextronics社は2012年12月、Motorola Mobility社の中国天津工場とブラジル・サンパウロ州ジャグアリウーナ工場買収で合意している。スマートフォン生産でMotorola Mobility社との連携を深め米国生産にも乗り出したFlextronics社が、Macの受託生産でフォックスコン、Quanta Computer社の2社体制に割って入るのか--。今後の注目点だ。