私が編集長を務めるEMSOneのウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)ではEMS(電子機器受託生産サービス)/ODM(Original Design Manufacturer)関連の情報を中心に毎日7本、記事を掲載しているのだが、2013年上半期に出した800本あまりの中で最多のアクセスを稼いだのは、同年2月下旬に出した「MacBook Air、13年Q3にRetinaディスプレイモデル 部品業者Q2から出荷」という記事だった。

 情報源は台湾系サプライヤーで、米Apple社が、同社の超薄型軽量ノートパソコン「MacBook Air」に超高精細の「Retina」ディスプレイを搭載した新モデルを2013年第3四半期に発売することを計画、部品業者らは同第2四半期から出荷を本格化するという内容。私が把握しているだけでもこの記事は日本国内のApple情報サイトやIT専門サイトはもとより米国、韓国、フランス、ドイツ、ロシア、さらには中東のサイトにも転載された。当社としても、Apple社製品に対する関心の高さを改めて認識させられた記事となった。

 その後、日本時間同年6月11日未明、Apple社は米サンフランシスコで開催した世界開発者会議(WWDC)で、新型MacBook Airを発表、即日発売したのだが、Retinaディスプレイの搭載は見送られた。台湾の業界筋の話をまとめると、Apple社がRetinaの搭載を検討していたのは間違いないようだ。Apple社は今回、省電力に優れた米Intel社の新型プロセサ「Haswell」こと第4世代Intel Coreを搭載することで、バッテリによる駆動時間を11型では従来モデルの最大5時間から9時間に、13型では7時間から12時間への延長に成功した。ただ、Retinaディスプレイを搭載すると、駆動時間を犠牲にしてしまう。これを嫌ったApple社が最終的に搭載を見合わせた、というのが台湾業界の見立てだ。

 さて、今回のWWDCではもう1つ、端末が発表された。プロ向けのデスクトップ・パソコン「Mac Pro」である()。円筒形の外観がゴミ箱のようだと揶揄する声もあるようだが、ワークステーション級のスペックを容積比で現行モデルの1/8に抑えるという小型化の実現が大きく注目されている。

Apple社がWWDCで発表した次世代Mac Pro
Apple社がWWDCで発表したプロ向けデスクトップ・パソコン「Mac Pro」の次世代モデル

 EMS/ODM業界が小型化やスペック以上に注目したのは、WWDCでMac Proを発表したApple社のフィリップ・シラー シニアバイスプレジデント(ワールドワイド・マーケティング担当)の発言だ。同氏は、「Mac Proを米国で組み立て・製造する」としたのである。