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国が乗り出したベンチャー支援事業、大企業に眠るシーズをかき出せるか

大久保 聡=日経エレクトロニクス
2013/06/17 05:00
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 経済産業省が進める「新事業創出のための目利き・支援人材育成事業」をご存じでしょうか。日本におけるベンチャー企業創出の支援を目的に、ビジネスのアイデアや新技術といったベンチャーのシーズを、起業支援者(ベンチャー・キャピタル(VC)など)と結び付け、シーズの事業化を促進しようというものです。案件を公募し、VCなどの支援者が推薦する案件を助成しています。ベンチャー企業とVCがタッグを組み、そこに対して1案件当たり最大2000万円の費用が政府から供給されます。いわば、VCがベンチャー企業を支援する際のリスク要因を国の支援により軽減しようというものです(同事業のページへのリンク)。

 2013年1月15日に閣議決定した平成24年度補正予算案に盛り込まれ、最初の公募は3月15日に、第2公募は5月15日にそれぞれ締め切られました。6月12日に開催された経済産業省主催のセミナー「新事業創出支援シンポジウム&Connect!」における同省の講演によると、141件の応募があったとのこと。そのうち27件が支援案件として採択されました。採択案件は製造業やICT活用サービスなど各種あります。ベンチャー企業には、大学発のところや企業からカーブアウト(事業切り出し)したものまであります。同セミナーの講演終了後に催された懇親会では、採択された複数の案件がパネル展示されるとともに、ベンチャー企業やVCの担当者が懇親会参加者に案件を紹介していました。

 案件を幾つか紹介しましょう。例えば、介護用途に向けた排泄を検知するシートを展示したベンチャー企業abaと支援者グローバル・ブレイン。これは、においを検知するシートを寝具の中に仕込んでおき、排泄をにおいで検知し、その情報をサーバーに送信するというものです。同情報を分析することで排泄のリズムをつかみ、介護の質と効率の向上に活用できるといいます。本年9月にはベータ版を出すことを目指しているとのこと。

 バイオ関連では、高感度・高速で細胞などの分析を進められるバイオ・チップを製造販売する、大学発ベンチャーのクオンタムバイオシステムズと支援者ジャフコ。バイオ・チップの加工に半導体製造技術を使い、細胞のDNAを効率よく取り出せる構造をチップに施すのが特徴です。

 半導体関連では、酸化ガリウム(GaO)の4インチ基板を開発する、大学発ベンチャーのROCAと支援者の東京大学エッジキャピタル。GaOを用いるとLEDやレーザ素子、パワー半導体の性能向上が図れるので、その実用化に必要なGaO基板を提供することを掲げます。

 その他、「一人家電メーカー」として脚光を浴びたBsizeの案件も採択されていました。トーマツベンチャーサポートが支援者につく形で、販路開拓や経営基盤の構築を図るとのこと。

 この最大2000万円という金額は、シーズ段階と事業段階の間にある「死の谷」を乗り越えるのに十分なのか・・・。いくらスタートアップの段階といっても、例えば製造業となると装置1台が何千万円もするので2000万円では足りません。今回の事業の関係者によれば、政府から供給される費用は、装置のような資産として残るものには使えないとのこと。開発や試作、開発の一部をアウトソーシングする際の費用のほか、起業する上での「露払い」での利用を想定しています。

 「露払い」とは何か。それは調査費などです。ベンチャー企業が販売しようとする製品やサービスに関する市場調査、特許や商標などの知的財産権についての調査などがそれです。懇親会に出展したベンチャー企業や支援者に聞いたところ、ベンチャー企業は製品やサービスの開発に多くの資金を投入したいので、市場調査や知的財産権の調査、特許や商標の出願などは後手に回りがちといいます。こうした調査などには今回の金額は「助かる」と口をそろえていました。

 この支援事業は今回補正予算でスタートしましたが、経済産業省によれば来年度は本予算に盛り込んで事業の継続を図る考えです。同支援事業の関係者によれば、大企業からのカーブアウト案件が増えることを期待しています。開発リソースがある大企業には事業シーズが多々ある一方、新規事業を始める際のハードルが高いところも多々あるとのこと。大企業の売り上げ規模にインパクトを与えるような事業規模が見込めないと、新規事業を立ち上げるのは困難という話はよく聞きます。このハードルを越えられずに企業内に滞留する技術やサービスのシーズを、カーブアウトで企業側から独立させる流れをつくれるかどうか。それは、今回の支援事業の成果に懸かっているでしょう。採択された案件の今後に注目したいところです。

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