テロ活動監視のためにMicrosoft社やApple社、Google社、Facebook社などの米国の大手IT企業のサーバーに米国の政府機関が直接アクセスして個人情報を収集できるシステム「PRISM」が存在するというニュースが最近、世界を駆け巡りました。電子メールの内容、ビデオ/音声チャット、投稿ビデオ、保存データ、ファイル交換、友人関係などが収集できると言われています(ただし、各企業はオンラインで直接データを収集できる点を否定しています)。また、米国の政府機関は大手通信会社やクレジットカード会社から通話履歴や決済履歴も取得しているという話もあります。

 9.11の同時多発テロによって、米国愛国者法(USA PATRIOT Act)が制定され、こうした情報を米国の政府機関が集めることが可能であることは、これまでも指摘されてきました。しかし、社会のインフラとなった米国の大手IT企業のシステムが、政府機関と直接つながっており、簡単にその情報にアクセスできる状況があるとするなら、驚きを禁じ得ません。

 このニュースに接してあらためて思い知らされたのが、ITのインフラのほぼすべてを米国企業に“支配されている”という事実です。パソコンやスマートフォンのソフトウエア・プラットフォーム、その上で動作するアプリケーション・ソフトウエア、インターネットのサービス――。身の回りのIT機器や、その上で動作するサービスを見渡したとき、あらゆるものが「米国印」であることに気付きます。もはや、米国印の製品やサービスなしにはビジネスも、日常生活も普通に送ることが不可能な状態です。

 これは米国政府が日本人である我々の行動を監視しようと考えれば、簡単にできてしまうことを意味しています。理論的には、米国側が米国のIT企業のサーバーにある情報へのアクセスを禁止したり、サーバーにあるデータを削除したりすることで、日本の社会を麻痺(まひ)状態にすることもできます。この米国一辺倒の状況は、個人、企業、国家にとって危険な状態であると言わざるを得ません。